平成26年度は、釜石市と多賀城市の調査を継続しつつ、釜石市を重点的に実施した。釜石市に赴き、復興状況の確認と、仮設住宅から復興公営住宅の建設状況を視察した。さらに、釜石と市域を接している大槌町、さらに北部に位置する山田町の復興状況の確認と資料収集を行った。被災者に対する聞き取りを継続的に実施し、生活再建のプロセスを把握することに努めた。当初の計画では、研究代表者・分担者の所属する大学で、複数回の学生アンケート調査を実施する予定であったが、今年度は実施しなかった。その代わりに、学生とともに、宮城県内で被災者支援を行っている市民活動団体等の現在の状況を把握し、いくつかの聴き取りを実施した。 3年の研究期間中の釜石市・多賀城市への定期的な視察を通じて、震災発生当時の復興予測から、住宅等のインフラ再建が大幅に遅れていることを観察できた。特に釜石市では、中心市街地の復旧が本格化しておらず、個人商店主のなかには再建の方針をいまだに確定できない人々もいる。また、周辺自治体との復興の進捗状況には大きな差があり、将来的に地域間格差につながる可能性が高いと思われる。 釜石市・多賀城市ともに、3・11という未曾有の災害を経て、発生以前の状態の復旧とは異なった、新たなまちづくりを推進しようとしている。特に釜石市では、ラグビー・ワールドカップの開催、世界遺産への登録の可能性等、大規模予算を必要とする事業が予想されるが、遅れている浸水地域の住宅建設等とどのように折り合いをつけ、住民の気持ちをまとめていくのかが課題であろう。研究代表者・分担者は、本研究で得られた基礎的な研究にもとづいて、釜石市・多賀城市の復興まちづくりの研究をさらに発展させる予定である。
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