研究課題/領域番号 |
24530648
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 常磐大学 |
研究代表者 |
松村 直道 常磐大学, コミュニティ振興学部, 教授 (00073031)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 孤独死 |
研究概要 |
本研究は、福祉社会学の立場から、孤独死の可能性がある人々に対して行われる福祉・医療的ケア、ソーシャルワークにおいて、「本人の生活意欲や自尊心を鼓舞する生活史的アプローチの欠陥が、孤独死を増やしている」という仮説の検証を目的にする。今年度は、1995年の神戸の震災被害地において、一人暮らし高齢者へのケアが、どのように実施されたのかを検証した。 検証の素材は、9~10月にかけて現地を訪問し、神戸市役所・神戸大学・神戸市民福祉振興協会が保存する資料を用いた。主な結果は以下のとおりである。 ①神戸市は、災害被害度の高いひとり暮らし高齢者を、北部や西部の大規模仮設住宅に、優先的に入所させた。その結果、疎遠な人間関係と要支援ニーズが高い高齢者コミュニティが生まれた。②マスコミは、仮設住宅のアル中患者発生率の高さを報道したが、医師団による正確な調査で、それは否定されている。調査は、「幾重にも重なる」原因への対応を指摘したが、その究明は遅れた。③市街地の都市公園を活用した「地域型仮設住宅」では、福祉施設職員等を活用した「生活支援員」による社会的ケアが実施され、高い評価を受けた。しかし、その実践記録によれば、支援員は雑多な生活相談や隣近所のもめごと処理に忙殺され、個々のケースに沿った対応や生活史への理解は行われていない。その結果、孤独死が増加したと推定される。④11月に、東電の原発事故に伴い集団移転をした、福島市内の仮設住宅調査を実施したが、ここでは近隣関係が保持されており、高齢者の孤立は未だ見られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
仮設住宅のひとり暮らし高齢者の中には、健康な生活を維持し、その後、神戸市の高齢者住宅政策を活用して、民間のマンション等で生活している人が多い。これらの人々に対する聞き取り調査は、個人情報保護のため、神戸市からの情報が得られず、現在とん挫した状態である。今後は、地元の大学の研究者等の支援を得て、調査を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
神戸市での残された調査は、2013年の学内行政が多忙なため、すぐに実施できる見通しはない。2~3年後に科学研究費、または別の資金を得て継続することになると思われる。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度は、千葉県松戸市常盤台地域に居住するひとり暮らし高齢者を対象にして、アンケート調査と個別事例調査を実施し、孤独死が多い実態の背景を検証する計画である。研究費の使用計画は、資料購入費60千円、消耗品22千円、国内旅費90千円、調査に伴う人件費60千円、その他・調査票印刷費等80千円、である。
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