研究課題/領域番号 |
24530651
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
福田 亘孝 青山学院大学, 社会情報学部, 教授 (40415831)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 家族 / ソーシャル・キャピタル / 親族 / ソーシャル・ネットワーク / 世帯 / 少子化 / 未婚化 / 離家 |
研究概要 |
今年度は当該の研究課題が採択された初年度であるため、先行研究の成果を整理し問題点を洗い出すことを主な目標として研究を行った。これにより以下の点が明らかになった。まず第一に、ソーシャル・ネットワークに関する研究は社会学において、長い歴史を持っている。特に、ソーシャル・ネットワーク研究はジェームズ・コールマンを嚆矢とする社会資本研究との関係が強く、行為論での理論研究で多くの研究が蓄積されている。第二に、近年、ソーシャル・ネットワークの分析はパットナム、リン、グラノベッターなどによって実証分析への応用が行われているが、その対象はコミュニティ、労働市場などであり家族について本格的な実証研究はほとんど行われていない。第三に、家族社会学や社会人類学においては、これまで親族研究の一部として親族・家族のネットワーク関係は分析されている。しかし、これらの研究では家族間や親子間での支援やコミュニケーション自体の特徴の記述に中心がおかれており、ネットワークと他の要素の因果関係の分析はほとんど行われていない。第四に、パートナーシップ形成、出産行動といった家族形成についての研究では新家政学派を中心とした経済学的な分析が中心であり、ソーシャル・ネットワークの視点からの分析はほとん行われていない。換言するならば「方法論的個人主義」による研究が中心である。 上記の知見によって以下の方向性が明らかになった。すなわち、個人は家族・世帯や親族などの様々なソーシャル・ネットワークに包含されながら社会的行為を行っている。それにもかかわらず、これまでの未婚化や少子化などの研究ではソーシャル・ネットワークの影響は十分に研究されてはいない。従って、離家、パートナーシップ、出生行動といった家族形成の特徴と変化を明らかにするためには、家族や親族といったソーシャル・ネットワーク関係を視野にいれた分析が必要であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は当該の研究課題が採択された初年度であるため、先行研究の成果を整理し問題点を洗い出すことが主な目標であった。「研究実績の概要」で詳述したように、今年度はソーシャル・ネットワーク研究と家族研究の成果を精査することで、家族形成の特徴と変化を明らかにするためには、ソーシャル・ネットワーク関係を視野にいれた分析が必要であることが明確になった。これによって、次年度以降の研究の方向性がはっきりし、国際比較データを使った実証分析で明らかにするべきトピックを具体化することが可能になった。これらの点をふまえると、研究課題採択の初年度としては研究はおおむね順調に進行していると言えよう。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、月数回のペースで研究会を開催し、結婚・パートナー関係、出生行動、家族形成、などについての先行研究の成果と問題点についての検討をさらに進める。加えて、ソーシャル・ネットワークについての先行研究の成果と問題点についても一層の検討おこなう。第二に、日本、ドイツ、イタリア、フランス、スウェーデン、イギリスで実施された調査のミクロ・データとマクロ・データをそれぞれの国の研究者と連携しながら分析し、分析結果の検討を行う。第三に、国際比較分析の研究成果を国内、および、国外の学会やカンファレンスで積極的に発表し、研究の完成度を高める。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後は主に四つの分野を中心にして研究費を使用するである。すなわち、第一番目は文献と資料の収集のための費用である。上述したように、次年度も先行研究の検討を行う予定であり関連分野の研究論文・書籍を入手する必要がある。加えて、日本とヨーロッパ諸国のマクロな社会経済データの資料収集も行う予定である。従って、論文、書籍、資料の入手のために経費を支出する。第二番目は出張のための費用である。これは、次年度はデータの分析によって得られた研究成果を国内、および、国外の学会やカンファレンスで積極的に発表する予定であり、このための経費として支出される。第三番目はソフトウェアの購入のための費用である。本研究で分析手法として計量分析を用いるので統計分析のソフトウェアが必須になる。従って、このソフトウェアを入手するために研究費を使用する。第四番目はパソコン関連のハードウェアの購入のための費用である。本研究では調査によって収集されたミクロ・データを使用して国際比較分析を行う。従って、処理するデータ量が莫大にならざるを得ない。このためデータ処理能力の高いハードウェアが不可欠になる。それゆえ、パソコン関連のハードウェアに対して研究費を使用する。
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