研究課題/領域番号 |
24530653
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
池田 理知子 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (50276440)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | メディア / コミュニケーション / 語り部 / 公害資料館 |
研究概要 |
本研究の目的は、公害資料館がどういったメッセージを発信しようとしているのか、そこが来館者とどういう関係性を結ぶ場として機能しているのかを明らかにすることである。2012年度は特に、4月に開館したイタイイタイ病資料館と、2014年度完成予定の四日市公害資料館(仮称)に焦点をあてて研究を進めると同時に、既存の公害資料館とそれらの新規資料館との比較も行った。イタイイタイ病資料館の展示に関しては、ジオラマとそのジオラマに連動した形で流される音声と映像が一種の強制力を帯びたものとなっており、かつ視聴者の参加度の低い「ホットなメディア」として機能していることが見えてきた。展示ですべてを見せることが不可能だとしたら、来館者にむしろ「行間」を読むことを促すような展示を目指していかなければならず、そのためには何が求められているのかを模索していかなければならない。その点でヒントとなったのが、四日市再生「公害市民塾」の若手メンバーが試みた手作りの移動資料館でのガイドであった。展示を通して何を考えてもらいたいのかを明確に示しながら案内していくやり方は、イタイイタイ病資料館や水俣病資料館のあらかじめ回答が用意された子供向けクイズなどとは異なる。移動資料館でのこうした試みは、「行間」を読むことを促す仕組みづくりの一つだったはずだ。 水俣病資料館においても新たな試みが始まった。ボランティア説明員の配置によって、来館者との交流を通して水俣病/水俣病事件についてお互いに考えるという姿勢が前景化してきた。また、「語り部」と「語り部補助」との対話形式の講話が、オーディエンスをより巻き込む形で、ステレオタイプな水俣病/水俣病事件を脱構築し、それぞれが自分の身に引き寄せて「公害」の意味を考えていこうとする場として機能している様子が見受けられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
四日市公害資料館(仮称)の開館が当初の予定より一年遅れるが、その分、準備のプロセスやそこでの様々な議論に焦点を当てることができ、今年度もその様子を観察できるものと考える。研究の中心である新規および既存の公害資料館のフィールド・ワークは順調に進んでおり、研究成果の中間報告としての論文発表も二点行った。
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今後の研究の推進方策 |
新規および既存の公害資料館のフィールド・ワークを引き続き行う。その合間に、文献調査も行う。特に、当初の計画には明確に記載していなかった「よそ者」についての文献を追加調査すると同時に、「よそ者」の語りについて考えていく。裁判闘争がさかんに行われていた時代を直接経験していない世代が「よそ者」としてどういう語りを行えるのか、といった「よそ者」の語りの可能性を探っていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の書籍代一部に充当する。
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