研究課題/領域番号 |
24530661
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
上林 千恵子 法政大学, 社会学部, 教授 (30255202)
|
研究分担者 |
津崎 克彦 一橋大学, 社会(科)学研究科, 科学研究費研究員 (00599087)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 外国人技能実習生 / 技能移転 / 縫製業 |
研究概要 |
研究初年度にあたるH24年度は、研究課題のうち衣料品製造業(縫製業)で就労する中国人技能実習生の技能形成と技能移転の状況を調査した。訪問地は、岐阜県および東京都内の縫製業である。 労働集約産業の典型である縫製業は、賃金の安い中国、ミャンマーなどの近隣諸国への海外展開が1990年代から始まっている。日本で成立している縫製業は、こうした海外縫製企業に対抗して、①高付加価値商品の製造、②短納期、③多品種少量生産、という特徴を持っており、またこうした特徴を持たなければ日本で生き残れない。 その結果、日本の縫製業で雇用している中国人技能実習生へも高い縫製技能、賃金コストに見合うスピード、が求められている。こうした高い技能は中国現地ではそれほど必要とされているわけではないので、その意味では縫製技術の技能移転は行われているといってよいであろう。 ところで、2010年の入管法改正によって技能実習生には来日当初から日本人と同じ賃金が支払われることになった。しかし、日本の習慣に不慣れであり、また日本語が不自由であることから、日本人と同額の賃金を支払っては日本人よりもコスト高になると考える事業主もあり、技能実習生への企業からの要求は厳しくなった。一方、実習生側も中国の経済発展から、来日希望者、とりわけ賃金の低い縫製業への就労希望者が減少傾向にあり、その結果、来日する労働力の質に低下がみられると同時に、賃金への要求がきわめて大きくなっている。 以上、暫定的な結論は、縫製業の技能実習生の労使関係は以前よりも悪化の傾向にあることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外国人技能実習生の技能移転については、初年度は縫製業について調査した。次年度のH25年は機械金属業で就労する技能実習生に関する技能移転を調査する計画である。3年目に両業種をまとめて、技能移転、特に中国人技能実習生への技能移転の実態についてまとめる予定であり、これまでの計画通りに進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
H25年度は機械金属業で就労する技能実習生について、大企業と中小企業に分けて調査する。調査予定地としては、技能実習生の受け入れ人数が最も多い愛知県を中心に、同じく外国人労働者のカテゴリーに分類される日系ブラジル人との労働力の質の違い(技能レベルと勤労意欲、勤務態度などを中心とする)、事業主にとっての重要度の差異を明らかにすることにより、企業内労働力構成のポートフォリオを明らかにする。事業内の労働力構成を見たうえで、日本の労働市場に占める外国人労働者の位置づけを見る。
|
次年度の研究費の使用計画 |
愛知県への調査旅費、およびH24年度の縫製業の継続として岡山県倉敷市周辺への調査旅費が費用の中心である。
|