研究課題/領域番号 |
24530663
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
中村 雅子 東京都市大学, 環境情報学部, 教授 (00217895)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | デジタル・アーカイブ / 市民参加 / システム / コミュニティ |
研究概要 |
本研究では3つの目的を掲げて取り組んでいる。文化実践としての各地の市民デジタルアーカイブの事例分析(目的I)では、1.公開されているアーカイブのコンテンツ分析、2.現地調査(関係者、参加者への質的インタビューや活動への参与観察)、3.関連するドキュメントの分析 などに基づくモデル化・定式化、システムの構築と地域への提案(目的II)については、従来の研究室のノウハウを生かし、多様な市民グループが利用可能なマッシュアップ型のシステムを提案する。実証実験と評価(目的III)については、1.従来から協働実績のある地域の市民メディア、市民活動グループと連携して参加を呼びかけ社会的組織づくりを進め、2.研究室が提供するサーバシステムをバーチャルな活動拠点として運営、3.参与観察、インタビューなどでデータを収集する、というものである。 本年は目的Iについて、1.市民が中心的な役割を持つ市民デジタルアーカイブ実践をリスト化し検討、2.実際に「港南歴史協議会(横浜)」「ちゅらしまフォトミュージアム」「タイフーンfm」「域情報エージェント株式会社」(以上、沖縄)」等に訪問して取材を実施した。目下定式化に向けて資料をさらに収集し分析を進めている。目的IIについては、市民デジタラルアーカイブのサイト構築で高く評価されている企業と連携して、フリーソフトであるWord Pressをもとに予定通りシステムのプロトタイプ構築を完了した。目的IIIについては、1.従来から協働実績のある地域の市民活動グループ「つづきアーカイブクラブ」や「都筑図書館」「つづき交流ステーション」らと連携して2回のワークショップを行い、社会的組織づくりを進めた。また2.研究室が提供するサーバシステムについて集合的に評価を行なってもらった。それを元に次年度、さらにシステムやデザインの改善を図るところまで進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画Iについては、実際に活動団体を訪問して関係者、参加者に対して、取り組みの経緯や、運営状況等も含めてインタビューを行い、アーカイブのコンテンツだけでなく、その記録、収集、運営、活用を可能にする技術-社会的ネットワークについて分析し、モデル化を行うこととしており、予定通りいくつかの実践団体の複数メンバーに直接取材を行うことができた。一部、スケジュールの関係で取材先を変更したところがあるが、対象については現時点での訪問意義(活発に活動を行なっているなど)を勘案しており妥当な選定だと考えている。 計画IIについては、上記の事例や分析を踏まえて、市民デジタルアーカイブを支援する情報システムの試験的構築を試みた。その構築にあたっては、最も適したフリーソフトとしてWordPressを選定し、これをベースとしたシステムを構築した。またFacebook、Twitterなどとの連動を可能にした。既存のシステムをマッシュアップすることで低コストで市民団体でも使いやすいシステムの提案を行うとの目的を達成した。サイトの設定では当初の目的の通りクリエイティブ・コモンズのアイデアを構造に組み込むことができた。 計画IIIについても、大学の地元エリア(横浜市都筑区:港北ニュータウン)での実証実験ということで、かねてより協力要請を受けている地域の市民グループと密接に協力して、8月と2月に市民参加型のワークショップを実施した。従来から協働実績のある地域の市民活動グループとして、「つづきアーカイブクラブ」や「都筑図書館」「つづき交流ステーション」らに協力を得て、システムやデザイン、運用の改善に向けた知見を得ることができた。また計画IVについては、関連する経過・成果の報告を2012年度の日本質的心理学会のシンポジウムでの報告を行った。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に基づき、計画IからIVを遂行する。 計画I:文化実践としての各地の市民デジタルアーカイブの事例分析 については、初年度に引き続き、取材を継続しデータを収集し、モデルの定式化を進める。 計画II:デジタルアーカイブ・システムの構築 についてはすでに構築したプロトタイプをカスタマイズしていく形で改善する。またコンテンツを充実させるとともに、その過程で、収集した素材の対面的な利用を含め、関係者のネットワークをより充実させていくこととする。 計画III:大学の地元エリア(横浜市都筑区:港北ニュータウン)での実証実験 については、実際にデータの収集のための協力者、参加者を増やし、一般市民が簡単に情報を提供、享受できる仕組みづくりをさらに検討する。また実際の参加者に対して、インタビュー、アンケート、アーカイブ・コンテンツ、およびナラティブによって、地域への関心や地域イメージにどのような変化が生じたかを明らかにする。 計画IV:成果報告については、平成25年度以降も、初年度に引き続き2回のワークショップを開催する。また最終年である平成26年度には成果をまとめ、シンポジウムを開催する。また経過的な成果を内外の関連学会(国際活動理論学会、日本社会学会、日本社会心理学会、日本質的心理学会、日米のコミュニティ心理学会などを検討)で発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費のうち次年度繰越金は9080円であり、ほぼ予定通りの執行ができた。次年度の当初予算130万円および繰越金9080円の使途としては、サイトの維持管理についてはすでに設置したサーバを中心に行うこととし、その維持管理費や、ワークショップ人件費、配布資料、調査旅費などに用いる予定である。なお、システムサーバ、デザインソフト等については、前倒しの調達と別途大学予算で購入したものなども活用し、最適化できる組み合わせを検討して、経費節減に務める。その他の予算の使途の中では、データ整理、データ整理・分析などを重視し、経費を有効活用できるよう検討する。
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