研究課題/領域番号 |
24530664
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
藤田 結子 明治大学, 商学部, 准教授 (30453533)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 文化生産 / ナショナル・アイデンティティ / アート・ワールド / 界 / 日本らしさ / グローバリゼーション |
研究実績の概要 |
本研究は、グローバリゼーションのなかの文化とアイデンティティに関する理論的考察を行うことを目的とする。考察のため、「国境を越えて文化生産が行われるとき、どのように『日本らしさ』が再構築されているのか」という研究の問いを設定し、事例調査を実施した。 平成26年度は、引き続き文献研究とインタビュー調査、参与観察を実施した。文献研究では、文化生産に関する理論と、文化生産と人種、ナショナリティに関する事例研究を整理し、検討した。その際、ハワード・ベッカーによる「アート・ワールド」( art worlds)に加えて、ピエール・ブルデューの「界」「場」(champ, field)の概念が本研究にとって重要であることを見出し、ブルデューの文献研究を行った。 並行して、東京とパリにおいて、ファッション界と料理界を対象に、インタビュー調査を実施した。日本または欧米出身のデザイナー、パタンナー、ショールーム関係者、バイヤー、プレス、料理人、学校関係者などの職業を持つ人々にインタビューへの協力を依頼し、約20名にインタビューを実施した。さらに、2014年9月にパリと東京、2015年3月に東京のファッション・ウィークで開催されたショーや展示会で参与観察を行った。その際、聞き取りも行った。 以上の文献研究とインタビュー・参与観察の結果を基に、次の点を考察した。第1に、国際移動の要因である。なぜ文化生産に関わる人々は日本から欧米へ移動して働くのか、その要因を留学、就職、創業などの側面から分析した。第2に、パリまたは東京のファッション界、料理界において人々がどのように活動しているのかを明らかにしようと、「人々の交渉とネットワーク」「作品・商品の制作とアイデンティティ」「ゲートキーパーの評価」などの側面から分析した。これらの結果を、論文や本の章にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、インタビュー調査と参与観察が順調に進み、意義ある調査データが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、文献のアップデートを行いつつ、引き続き次の方法でフィールド調査を行う。調査地はグローバルな文化生産が行われている国内または海外の都市とする。 (1)サンプリング 対象者―ファッション界、料理界で活動をする人々(デザイナー、パタンナー、プレス、販売員、バイヤー、料理人、編集者・記者、批評家、大学・専門学校の教職員等)。方法 ― 調査参加者を通してスノーボール・サンプリングを行う。または、フィールドで出会った関係者に調査参加を依頼する。さらに文化生産がおこなわれている場で参与観察を行う。 (2)インタビューと参与観察 リクルートした調査参加者に対して、主にオープンエンドのインデプス・インタビューを実施する。言語は英語、仏語、または日本語を使用する。また、調査参加者が関わる組織や活動する現場で参与観察を行う。さらに、可能な限り、調査の参加者にフォローアップのためのインタビューを実施し、聞き逃した点や意識の変化等を探る。 平成26年度の調査において、東京のファッション界におけるフィールドワークが進展したため、これにいっそうの焦点を置きデータを集めたい。 以上の結果をまとめて英語・日本語で論文を執筆し、投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成24年度に、半年の間産前産後休暇・育児休暇取得した。その影響により、予定していたインタビュー調査の実施が遅れている。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の理由から、1年間遅れたスケジュールで助成金を使用する。平成26年度に予定していたインタビュー調査は、平成27年度に実施したい。よって、26年度分の助成金を27年度に使用する。
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備考 |
科学研究費による調査結果や研究成果を公開・報告している
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