研究課題/領域番号 |
24530668
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
岩間 暁子 立教大学, 社会学部, 教授 (30298088)
|
研究分担者 |
挽地 康彦 和光大学, 現代人間学部, 准教授 (30460041)
劉 孝 鐘 和光大学, 現代人間学部, 教授 (80230605)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | マイノリティ / 移民 / 弱者 / 少数民族 / シティズンシップ / 社会学 / 国際人権 / 国際比較 |
研究概要 |
「マイノリティ」はヨーロッパで「少数民族」を指す概念として誕生した後、ヨーロッパや国連、国際人権分野では積極的な権利保障の対象としての「マイノリティ」を「民族的・言語的・宗教的少数者」に限定する考え方が定着しているのに対し、米国や日本などでは「弱者」一般を指すより広い意味を持つ概念になった。そのため、国際人権法に基づいた「マイノリティ」の保護が難しくなった面もある。他方、先進国では「マイノリティ」との共通点が多いと考えられる「移民」の定住化が進んでいるにもかかわらず、「移民」を「マイノリティ」との関連で考える理論的実践的動きはあまり見られない。それはいったいなぜなのか。このような問題意識から、本研究は学際的・国際比較的アプローチを用いて1.「マイノリティ」概念が民族を中心に構成されてきた背景とその意味を「弱者」概念との関連を視野に入れて明らかにすること、2.「マイノリティ」と「移民」を区別する論理や背景の解明、の二つを主な目的としている。 2012年度はヨーロッパにおける「マイノリティ」の権利保障をめぐる歴史と原理に関する先行研究ならびに移民のシティズンシップに関する国内外の先行研究のレビューをおこなった。これらは本研究の二つの目的の両方にまたがる必要不可欠な作業であり、研究の基盤となる重要性を有している。 あわせて、国際人権法や憲法学の専門家へのヒアリング調査を実施した。これは、国内外の先行研究の検討の結果、ヨーロッパでは国際人権アプローチに対する関心が近年高まっているというレビューの成果に基づくものである。日本の社会学ではほとんど知られていない国際人権アプローチの有効性と限界、日本社会への適用の可能性などについても検討を始めたという意義を有している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主な目的は学際的・国際比較的アプローチを用いて1.「マイノリティ」概念が民族を中心に構成されてきた背景とその意味を「弱者」概念との関連を視野に入れて明らかにすること、2.「マイノリティ」と「移民」を区別する論理や背景の解明、の二つである。 これらの目的を達成するために2012年度は主に3つの作業を進めた。第一に、関連する先行研究の収集を各自で進め、計5回の研究会を開催し、【研究実績の概要】に記したレビューの成果をメンバーで共有した。 第二に、憲法学や国際人権法における「マイノリティ」の権利保障の枠組みと現状の課題などに関して二名の専門家へのヒアリング調査を実施した。 また、「マイノリティ」のありようや権利保障の問題を考えるにあたって、マジョリティ側の意識や認識、関心のありようが及ぼす影響を見逃すことはできないわけだが、日本における主要な「マイノリティ」問題の一つとしてとらえられる沖縄における最近の「民族意識」の高まりやその背景についてのヒアリング調査も実施した。 このように研究計画を順調に遂行しており、初年度でおこなうべき研究目的も順調に達成できている。
|
今後の研究の推進方策 |
2012年度に提出済みの「交付申請書」に記載しているように、「マイノリティ」と「移民」をめぐる状況や政策の国ごとの違いの背後には、国によって異なる「マイノリティ」観や「移民」観があると考えられる一方、「マイノリティ」や「移民」の階層的状況が人々や政府の「マイノリティ」や「移民」のイメージや観念を規定している面もあると考えられる。 このような問題意識から、2013年度以降は主に3つの作業を進める。 1.「マイノリティ」「弱者」「移民」の実態に関する国際データの収集と分析(量的データについてはOECDのデータを中心に収集し、「マイノリティ」「弱者」「移民」の現状について社会階層を中心に明らかにする。加えて、「マイノリティ」「弱者」「移民」を対象とした社会政策に関する各国の方針や特徴などを明らかにする) 2.「マイノリティ」「弱者」「移民」の実態および保護政策に関する海外調査(近年急速に「移民」の数が増えているヨーロッパ、韓国の他、「移民」を歴史的に積極的に受け入れてきた米国において「マイノリティ」や「移民」の支援をしている団体や関連する行政機関へのヒアリング調査をおこなう)。 3.これまでの検討を踏まえて、成果をとりまとめる。具体的には(1)「マイノリティ」「弱者」「移民」の概念間の関連性の整理と政策の類型化、(2)日本社会が「マイノリティ」「弱者」「移民」を包摂するために必要な政策の方向性について各国の取り組みを参考にしながら提示、(3)成果の公表をおこなう予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
先行研究の収集費の一部および専門家へのヒアリング調査のテープ起こしの委託費については、他の研究費を利用できたために繰越金が生じた。 このように、有効に研究資源を活用することに努めた結果として生じた2012年度の繰越金と2013年度の研究費と合わせた使用計画については、上記の【今後の研究の推進方策】で記した海外調査のための海外旅費が支出の大半を占めるが、関連する先行研究の収集や専門家へのヒアリング調査にもあてる予定である。
|