研究課題/領域番号 |
24530671
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
山本 武利 早稲田大学, 政治経済学術院, 名誉教授 (30098412)
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キーワード | GHQ / CCD / 検閲 / メディア / 占領期 / 日本人 / 発行禁止 / 世論 |
研究概要 |
当年度は支配するCCDと支配を受ける日本人の双方の資料を日報、日記次元で収集、分析することに努めた。 CCDのメディア検閲・分析資料がどれほど正確なものかどうか、大いに検討する必要があろう。日本の企業側、経営者側、そして民衆が面従腹背の姿勢で、肝心な資料や証言は出さなかったとも考えられる。もちろん日本人の本音を探る努力に注力した。それと同時にCCD指導者の意向や目的を忠実に反映される資料獲得に万全の目配りを行った。 組織の末端の記録担当者は日々発生する事実をただ記録するだけである。日報に対し、週報、月報、年報とその記録媒体の発行期間が長くなるに比例して、記録者への組織上部からの干渉が強くなる。時間が長くなるに比例して、事実は歪められがちになる。はっきりしているのは、GHQの占領目的達成やアメリカ軍の戦略上の必要性から、資料収集、分析の工作がなされてきたことである。またここでいう検閲資料やメディア資料は、まとまった形の分析報告書だけではない。いやむしろそれはごく一部分である。会議録、日報、週報、月報といった比較的まとまったものから、日々の1枚のメモ、部局内や部局間の交換文書、新聞翻訳など雑多なものまである。そこには、日本のメディアの経営者や記者との会合や陳情受け付けの記録やかれらの出した名刺もある。これらの資料の大部分は英文であるが、日本政府や企業などから収集した日本文のものもある。 当年度は CCDの通信部門、PPB部門の日報を時系列的、セクション毎に整理し、それらの資料の相互把握に努めた。これらの成果は最終年度で総括に寄与すること大と認識している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2013年7月に『GHQの検閲・諜報・宣伝工作』という著書を公刊した。ここには2年余りの当科研費で獲得した資料、それにもとづく分析を反映させることができた。 しかし日本人側の資料が不足している。とくに日本人検閲者の深層心理の把握が実証的に把握できなかった。発掘した日本人検閲者のリストは世に注目され、評価されたが、その時期は1948年、1949年のもので、検閲初期のものは断片的にしか発見できていない。とくに敗戦当初の日本人が今までの敵国の自国民検閲に協力したのかを彼らの証言で把握する必要があるのに、それを語った人は少ないし、多くが物故者となっている。この証言不足をどう乗り越えるかは、最終年度の最大の課題ともいえよう。
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今後の研究の推進方策 |
国内外における研究グループの位置付け、研究グループとして獲得を目指す外部研究資金、若手研究者等の育成、人材構成の多様性を図る。 占領期新聞・雑誌データベースを基にして、20世紀メディア研究所を結成し、国内外の研究者のネットワークを構築することはある程度成功したと言えよう。『Intelligence』の発行を継続し、購読会員制度を敷いて、安定した発行を継続していけるよう模索する。また、研究所の中心メンバーは、NPO法人「インテリジェンス研究所」を2012年2月に設立、サーバー維持費獲得のための活動として、2013年7月からデータベースの有料化に踏み切り、あらたに「20世紀メディア情報データベース」として公開し、さらに新たな資料を追加し、データベースを充実させていこうと計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
人件費、謝金が資料整理が遅れたために大幅に減少した。 最終報告の整理のための費用を大幅に増加させる。
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