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2012 年度 実施状況報告書

東日本大震災被災地域における減災サイクルの構築と脆弱性/復元=回復力に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 24530673
研究種目

基盤研究(C)

研究機関早稲田大学

研究代表者

浦野 正樹  早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20160335)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード東日本大震災 / 脆弱性 / レジリエンス
研究概要

2012年度は、主として東日本大震災の避難生活と復旧・復興過程の調査研究を中心に研究活動を進めていった。調査研究活動の主なフィールドは、岩手県大槌町、宮城県気仙沼市、福島県いわき市などであるが、それ以外の地区についても岩手県から福島県にいたる被災地に関する情報収集を継続的に進めていった。調査研究の主な焦点は、地域の<脆弱性>と<復元=回復力>を探ることにあり、平常時における事前の減災・リスク対応活動と非常時における災害応急活動、及び復旧・復興過程における地域の復興に向けた取り組みや活動を、相互に関連付けて分析を進めることにある。但し、現在の災害ステージを考慮し、主に災害直後の避難行動とその背景(自宅の立地などの地理的条件、危機意識、家族関係や仕事・近隣等の社会関係など)についての解析と、避難生活の過程、復旧・復興に向けての対応及びそこで発生するさまざまな問題の解明に重点を置いた調査研究を先行させている状況である。
そこでは住民の危険意識や形成された「想定」が避難過程に強く働き、さまざまな装置によって安全が保たれていると錯覚することが結果的に大きな被害に繋がっていったこと、高齢者を持つ家族にとって避難行動や避難生活自体がイメージできず難しいため避難自体を忌避する傾向がみられることが明らかになってきた。これらは災害以前の社会的脆弱性が、被災や被災後の対応行動に強く影響を及ぼしている事例として、被災メカニズムを検討するうえで重要である。
これらの調査研究の成果については、総合人文科学研究センターのキックオフシンポジウム開催などを含めて、研究集会や上記調査研究の経過報告会を開催して報告したほか、早稲田大学ブックレットシリーズや各種学会誌、報告書などに掲載している。その他、東日本大震災関連の、文献情報やデジタル資料(電子図書館としての情報集積)の収集と整理拡充などを行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

調査地において復旧・復興状況にいろいろな課題が山積しているため、被災から避難生活を経て復旧・復興に向かうプロセスの実地調査と分析がとくに難しく、予定より調査課題が多くなってきたために現地での実地調査を充実させていく必要があった。
今後もそうした状況は変わらないと思うが、少し実地調査活動にウェイトをかけた研究運営をするように対応してきたため、全体的には順調に研究調査は進んでいると思っている。

今後の研究の推進方策

東日本大震災の被災地の状況が地域の条件や進展によって非常に異なっており、しかも復旧・復興状況にいろいろな課題が山積しているため、被災から避難生活を経て復旧・復興に向かうプロセスの調査と分析がとくに難しくなってきている状況がある。
したがって、予定より調査課題が多くなった分、実地調査を充実させていく必要があり、幾分実地調査活動にウェイトをかけた研究運営をする方針である。また、東日本大震災被災地の個別対象地区(福島県いわき市、宮城県気仙沼市、岩手県大槌町など)の復旧・復興過程での地域課題やそれに対する対応などに関する情報収集と情報のデータベース化に加え、それ以外の被災地域についても比較検討の意味からデータの収集を進め、地域脆弱性に関する検討フレームを作成して、過去の災害事例との照合を図っていく方向で進めていく予定である。

次年度の研究費の使用計画

調査地において復旧・復興状況にいろいろな課題が山積しているため、被災から避難生活を経て復旧・復興に向かうプロセスの調査と分析がとくに難しく、予定より調査課題が多くなった関係で現地での実地調査を充実させていく必要があると思っている。したがって、少し実地調査活動にウェイトをかけた研究費の使用を計画している。調査研究活動の主なフィールドは、岩手県大槌町、宮城県気仙沼市、福島県いわき市などであるが、それ以外の地区についても岩手県から福島県にいたる被災地に関する情報収集を継続的に進めていく予定である。
とくに、主たるフィールドにしている岩手県大槌町、宮城県気仙沼市、福島県いわき市に関しては、災害後の状況把握と問題点の洗い出し作業を行ったうえで、時系列での災害関連事象フロー図とそれら現象の社会的な背景を吟味し、地域の脆弱性の蓄積と地域社会の亀裂の顕在化、地域社会の復元=回復力の源泉とそれを左右する要因群、災害過程における社会関係の再編成などの過程として情報を整理し分析していく計画である。
また、2013年度は東日本大震災の被災地に関しては、地域比較を意識しながら上記以外の岩手県から福島県にいたる被災地に関する情報収集を行っていくが、さらに中越地震、中越沖地震、能登半島地震、三宅島全島避難、阪神淡路大震災など、既存の災害についても、情報整理と参照点の抽出作業、および地域社会の脆弱性と復元=回復力に関する理論的分析を行う予定である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 東日本大震災の災害過程にみる生活困難の諸相2013

    • 著者名/発表者名
      浦野正樹
    • 雑誌名

      社会学年誌

      巻: 54 ページ: 35-53

  • [雑誌論文] 東日本大震災を経験して「想定外」とは何か--災害文化・リスクコミュニケーションのあり方--2012

    • 著者名/発表者名
      浦野正樹
    • 雑誌名

      関東都市学会年報

      巻: 14 ページ: 47-48

  • [学会発表] 原発事故の災害過程における都市機能の復旧・復興の現状と課題

    • 著者名/発表者名
      川副早央里・浦野正樹
    • 学会等名
      地域社会学会
    • 発表場所
      慶応義塾大学
  • [学会発表] 東日本大震災の災害過程にみる生活困難の諸相:過疎地域における脆弱性形成のメカニズムと復元=回復力をめぐって

    • 著者名/発表者名
      浦野正樹
    • 学会等名
      早稲田社会学会
    • 発表場所
      早稲田大学
  • [学会発表] 津波被災地域における災害過程と過疎地域の復興に向けた考察:大槌町を中心として

    • 著者名/発表者名
      野坂真・浦野正樹・川副早央里
    • 学会等名
      日本社会学会
    • 発表場所
      札幌学院大学
  • [学会発表] いわき市における避難状況の位相と避難生活上の課題に関する考察

    • 著者名/発表者名
      川副早央里・浦野正樹・野坂真
    • 学会等名
      日本社会学会
    • 発表場所
      札幌学院大学
  • [学会発表] 災害社会学の展開と東日本大震災の現在:過疎地域における脆弱性形成のメカニズムと復元=回復力をめぐって

    • 著者名/発表者名
      浦野正樹
    • 学会等名
      日本社会学会
    • 発表場所
      札幌学院大学
    • 招待講演
  • [図書] 津波被災地の500日:大槌・石巻・釜石にみる暮らし復興への困難な歩み (早稲田大学ブックレット「震災後」に考えるNo.29)2013

    • 著者名/発表者名
      浦野正樹・野坂真・吉川忠寛・大矢根淳・秋吉恵
    • 総ページ数
      125
    • 出版者
      早稲田大学出版部
  • [図書] 災害に強い社会をつくるために (早稲田大学ブックレット「震災後」に考えるNo.22)2012

    • 著者名/発表者名
      浦野正樹・岡芳明・鈴村興太郎・濱田政則
    • 総ページ数
      139
    • 出版者
      早稲田大学出版部
  • [備考] 早稲田大学地域社会と危機管理研究所

    • URL

      http://www.waseda.jp/prj-sustain/

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公開日: 2014-07-24  

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