研究課題/領域番号 |
24530673
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
浦野 正樹 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20160335)
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キーワード | 東日本大震災 / 脆弱性 / レジリアンス / 復興過程 |
研究概要 |
本年度も継続して岩手県大槌町、宮城県気仙沼市、福島県いわき市などを主たるフィールドにして研究を進めた。調査研究の主な焦点は、平常時の減災・リスク対応活動から、災害時の応急活動、地域の復興に向けた取り組みや活動を一連の過程として分析を進め、その過程を左右する地域の脆弱性と復元=回復力を探ることにある。そのうち、災害直後の避難行動とその背景(自宅の立地などの地理的条件、危機意識、家族関係や仕事・近隣等の社会関係などの既存の状況)についての解析は、他研究機関とも連携しながら、主として岩手県大槌町において地域住民団体や町震災検討委員会の活動と並行させて進めてきた。復旧・復興への取り組み状況については、大槌町と気仙沼市、いわき市を参照点とし、主として水産業~水産加工業といった観点からの地域の取り組みに関する調査研究を行っている。なお、地域の記憶を再生し未来に繋げるアーカイブズ事業などを通して、震災前の地域開発の歴史やその過程での地域の脆弱性の蓄積についても関連させながら分析を進めている。地域により復旧・復興局面での状況の落差がみられるため、各地の地域支援活動を観察しながら、気仙沼市ではとくに市街地部の鹿折地区、唐桑半島の只腰地区、鮪立地区の状況推移を追ってきた。福島県いわき市についても、常磐炭鉱や新産業都市の歴史、北部に隣接する双葉郡における原子力発電所の立地などが首都圏との関係を背景にした地域発展を示すうえで象徴的であるため、いわき地域史研究会との情報交換などを通じて地域のアーカイブズ事業などを展開しながら、地域の開発の歴史と震災による被害・影響の受け方に関する調査を背景にして震災当初から津波被害を受けた沿岸部の調査や市内の活動団体のヒアリングを実施してきた。これらの成果は、専門の諸学会や講演会のほか、研究部門の研究例会で報告しており、後述の発表論文などで一部公表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査地において復旧・復興状況にいろいろな課題が山積しているため、被災から避難生活を経て復旧・復興に向かうプロセスの実地調査と分析を充実させていっている。今後もそうした状況は変わらないと思うが、実地調査活動にウェイトをかけた研究運営をすることで全体的には順調に研究調査は進んでいると思っている。
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今後の研究の推進方策 |
東日本大震災の被災地の状況が地域の条件や進展によって非常に異なっており、しかも復旧・復興状況にいろいろな課題が山積しているため、被災から避難生活を経て復旧・復興に向かうプロセスの調査と分析がとくに難しくなってきている状況がある。 したがって、予定より調査課題が多くなった分、実地調査を充実させていく必要があり、幾分実地調査活動にウェイトをかけた研究運営をする方針である。また、東日本大震災被災地の個別対象地区(福島県いわき市、宮城県気仙沼市、岩手県大槌町など)の復旧・復興過程での地域課題やそれに対する対応などに関する情報収集と情報のデータベース化に加え、それ以外の被災地域についても比較検討の意味からデータの収集を進め、地域脆弱性に関する検討フレームを作成して、過去の災害事例との照合を図っていく方向で進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末の2月~3月にかけての旅費の使用スケジュールを立てるのが難しかったため、年度の残額が発生した。これは調査現地の事情による出張期間と年度末の大学スケジュールの調整が難しいことに起因している。また、最終年度はもともとやや全体額が低くなっているために、4月以降の出張予定を立てる時に調整するつもりで最終年度の調査旅費として使用を控えておいたという事情もある。 2013年度までの未使用額は、2014年度の調査旅費として活用する予定である。現地調査はまだ必要であるため、その回数を調整することで対応したい。
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