研究課題/領域番号 |
24530676
|
研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
竹下 修子 愛知学院大学, 文学部, 教授 (60454360)
|
研究分担者 |
石川 義孝 京都大学, 文学研究科, 教授 (30115787)
花岡 和聖 東北大学, 学内共同利用施設等, 助教 (90454511)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 国際結婚 / 家族形成 / 定量的分析 / 定性的分析 |
研究実績の概要 |
国際結婚と日本人アイデンティティの関係性について、インタビュー調査を中心に研究を行った結果、以下のことが明らかになった。 日本社会には、血統と文化における日本の両義的位置やジェンダー格差が根強く残存しており、日本社会が歴史的に行ってきた外国人配偶者に対する排除と包摂を繰り返しながら、日本人アイデンティティを守ろうとしている。ただし、外国人配偶者を日本人として包摂、非日本人として排除といった二項対立をなしているのではない。これらの両極の間には多様な段階を含んでおり、いずれにも含まれない周縁化された人々や、社会的排除の結果として、あるいは社会的排除を避けるために潜在化する人々も存在することを忘れてはならない。 日本における「国際結婚」は、国籍が異なる者同士の結婚を意味し、国籍の違いに重点が置かれているが、現実の日本社会では血統の優位性ゆえの外国人配偶者の排除や包摂が行われている。特に、外国人配偶者が、アジア出身で、女性で、かつ家父長制が残存する農村地域に居住している場合には、夫方親族やコミュニティ内で、国際結婚カップルから生まれた子どもを「完全な日本人」として育てようとする力が強く働く傾向がみられる。その背景には、文化の序列、国家間の経済格差、ジェンダー格差が存在している。 日本では重国籍を認めていないからといって、国際結婚カップルの子どもたちが、たとえ潜在的にではあれ、保持している複合的アイデンティティや複合的文化を否定することがあってはならない。多文化社会という言葉を耳にして久しいが、本当の意味での多文化社会の構築に向けて、お互いの違いを尊重できる社会づくりが、今の日本の課題のひとつである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本科研が、おおむね順調に進展している理由は以下の3点である。 第1に、総務省統計局から提供を受けた2010年国際調査個票データを用いて、2005~2010年における外国人の目的地選択、および国際結婚カップルの家族形成に影響を与える移動パターンについて考察した結果を平成25年度に日本語論文として公表したが、平成26年度は、その分析をさらに進展させて、その結果を日本人口学会大会で発表した。さらに、それを英語論文としてまとめ、現在、査読付雑誌に投稿中である。 第2に、夫外国人ムスリム・妻日本人の国際結婚家族にインタビュー調査を行い、社会資本と人的資本が子どもの教育にいかなる影響を与えているかについての考察を行った。分析結果については、InternationalCongress of International Association for Cross-cultural Psycholoty (フランス)で2014年7月に発表を行った。その後、論文としてまとめ、現在、査読付英文雑誌に投稿中である。 第3に、「研究実績の概要」で述べた国際結婚と日本人アイデンティティとの関係性についての研究成果は、2015年7月に香港で開催されるInternational Conference of the International Assosiation for Intercultural Communication Studies で発表予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、アメリカに居住する日本人の国際結婚について、在米期間、職業、学歴、年収、配偶者のエスニシティなどの変数が、結婚行動にどのような影響を与えるのか、ロジット・モデルを用いて分析を行う。使用するデータは、アメリカ統計局が実施する「アメリカン・コミュニティ・サーベイ(以下ACS)」の2009~2013年の累積マイクロデータである。 ACSは、人口、世帯、居住等に関する情報を適時に把握するための大規模な標本調査であり、国勢調査のロングフォーム(詳細な調査票)における質問項目とほぼ同じ項目の調査が行われている。毎月調査が実施されており、12か月の調査世帯を累積すると、おおよそ全世帯の1%に相当する。したがって、5か年の累積マイクロデータは、全人口の5%に相当する。そのため、人口規模が小さい在米日本人を対象とした分析においても、統計分析が可能なサンプル数を確保できる。 また、在米日本人の比較対象として、親がアメリカ人ではなく、それぞれの出身国で生まれた在米のインド人・中国人・台湾人・フィリピン人・韓国人・ベトナム人を取り上げて考察する。 このほか、日本に居住する国際結婚カップルへのインタビュー調査を引き続き実施する。国際結婚カップルのうち1980年代後半の結婚コーホートの子どもたちが、結婚年齢に差し掛かっている。本科研において、これまで国際結婚から生まれた子どもたちの教育問題に焦点を絞ってインタビュー調査を行ってきたが、平成27年度は、子どもたちの配偶者選択について、定位家族から生殖家族への移行期にある彼らの葛藤などに関する調査を行う予定である。
|