研究課題/領域番号 |
24530677
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
森 千香子 一橋大学, 大学院法学研究科, 准教授 (10410755)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 都市社会学 / EU / フランス / 衰退地区 / 貧困 / エスニシティ |
研究概要 |
初年度だったので、前半に基礎資料・データの収集と事前調査、後半には収集した資料の分析と本調査を行った。 前半は、①関連文献のレビュー、②理論的枠組みの精錬、③事前調査の準備(調査日程の策定、対象者の選定、海外研究協力者とのインターネット会議による打ち合わせ、予備調査質問表の作成など)を行った。 8月にはブエノスアイレスで開かれた国際会議に出席し、この分野の第一線で活躍する研究者たちと議論を行い、国際比較の理論枠組構築の可能性について考察を深めた。9月中旬には二週間、パリ郊外にて、海外研究協力者との研究打ち合わせ(比較枠組みの検討など)と事前調査(問題の所在を掴むため都市政策、住宅、福祉、司法、警察関係者を対象に聞き取り)を実施した。 後半は、①事前調査結果の分析、②関連資料・文献を収集の継続を中心に行った。さらに平成25年3月にはリール大学で開かれた学会に参加し、これまでの調査結果の一部を発表し、貴重な意見交換をおこなった。さらに一週間というかぎられた時間ではあったが、パリ郊外の公営団地における参与観察と住民への聞き取り調査を実施した。 初年度で得られた知見として、この十年間、EUの都市政策で「ソーシャル・ミックス」という概念がクローズアップされ、都市政策の転換が起きていることがわかった。そして、こうした政策がおよぼす影響のひとつとして、当該地区の住民の階層化が進行しつつあることがわかってきたが、その傾向と影響については平成25年度以降の調査で、さらに明らかにしていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では1990年代からEUレベルでも国家レベルでも衰退地区対策の制度化がすすみ、地域再生政策が行われてきたにもかかわらず、状況の改善がすすんでいない地区に注目し、こうした政策の影響を再検討、分析して、衰退地区の変容と背景を理解する目的で、パリ郊外を中心にとりあげながら、アムステルダム、ロンドンで現地調査を行い、比較分析をおこなうことをめざしている。 平成24年度は、調査対象の三地区における基本情報・データを収集して、比較分析の枠組みの構築をすすめた。具体的にはア)三地区の現状を社会・経済・民族・都市空間などの側面から把握し、歴史的形成の過程や当該社会における同地区の位置づけを整理する、イ)三地区で行われてきた都市政策の内容と背景、主体の多様性(地域、国、EU)を整理し、特に2000年代以降の地域再生政策への転換と背景を検討することをめざし、海外研究協力者との連携によって、概ね目的は達成できた。 特に、当初は予定していなかった8月のブエノスアイレスでの国際会議への出席をつうじて、衰退地区研究の第一人者との密度の濃い議論を三日にわたって行うことができたのは貴重であった。反省点としてはアムステルダム調査が海外研究協力者の体調の問題もあってやや遅れていることがあげられる。 こうした点をふまえながら、平成25年度以降も慎重に計画をすすめていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、本研究が調査対象に定めた三地区の実態が近年どのように変容し、それがどのようなメカニズムのもとで起きているのかを明らかにするため、聞き取り調査をすすめ、データの整理・分析を行う。 前半は、①平成24年度の調査データの整理(聞き取りのテープ起こし、データの分類)と分析作業、②夏の海外調査の準備、を主に行う。分析作業は研究協力者と連絡をとりあってすすめる。8月末から三週間、アムステルダム(一週間)、パリ郊外(二週間)の現地調査を実施する予定である。 後半は調査データの整理ならびにデータの分析作業が中心となる。テープ起こしは現地ネイティブスピーカーにアルバイトを依頼する。データ分析はそれぞれが進めるが、海外研究協力者とは定期的にインターネット会議で進捗状況を報告し、議論を深める。秋にはここまでの調査結果を研究会で発表する。平成26年3月には渡欧し、海外研究協力者と会合をもち、データの分析を行い、追加調査の必要について検討する。 調査をより効果的に行うため、専門知識の提供を受ける。具体的にはストラスブール大学・ティソ准教授、社会科学高等研究院・ファッサン教授らを予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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