研究課題/領域番号 |
24530678
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
竹内 隆夫 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (40105747)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 結納(シンソート) / 末娘(一人娘) / 番地の継承 / 扶養 / 系譜の記憶 |
研究実績の概要 |
今年度は、以前に提出したタイ家族の構造への考察をを再検討するための資料を得るために、婚姻時に妻方の母親から夫方の母親に対して請求される「結納」(シンソート)の額を、妻方と夫方の母親に対して聞き取り調査を行った。双方に聞くことにより、要求額と実際の額との差異や、妻になる娘の地位(長女や末娘など)によりどれだけの要求額の差が生じるかを検証するためである。このことは、母親が娘のうちだれをもっとも重視しているかが明らかになり、そのことと家族の世代間継承(跡取り)との関係も明瞭になると見たからである。 これまでの研究成果から、末娘の地位が姉妹間でもっとも重視されていることが判明していたが、結納の額からもそのことが裏付けされた。しかも、たんに家族の世代間の継承に重要というだけではなく、むらの長である区長を選出する場合にも、これまでの区長の妻の系譜をたどると末娘(一人娘も含む)以外の夫は選出されていないし、現在は末娘が区長に初めて選ばれていることも明らかになった。従来のタイの研究では、このような系譜を明らかにしてどの地位の娘がどういう役割を担っているかは実証されてはいないため、今回これを系譜と重ねて実証できたことは、タイ家族の構造を再検討する上で、きわめて重要な発見をすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画した聞き取りは、主要な家族についてかなりの成果を上げているが、出来る限り該当する家族の実態を聞きとる必要があるから。
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今後の研究の推進方策 |
タイ社会は急速な少子高齢化を迎えており、むらの将来を見る場合、少ない子がどのような形で親を扶養しうるのかということを考察したい。学歴が上昇している中で、高い教育を受けた子が近辺で職を得ることは困難なため、遠隔地に出なければならず、これまでとは大きく異なる親子関係の問題に直面しつつあるから。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度当初の計画では今年で調査を終了する予定でいたが、調査に出かけられる日程が十分に取れなかったため、予定している調査内容を、次年度に回して実施せざるを得なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度で実施できなかった聞き取り調査を中心にする社会調査に重点を置いて使用する。
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