研究課題/領域番号 |
24530681
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
高木 正朗 立命館大学, 産業社会学部, 非常勤講師 (70118371)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 超高齢者 / 最高齢者 / 「超高齢人口指数」 / 超高齢者書上 / 人別改制度 / 人別帳 / 過去帳 / 養老の礼 |
研究概要 |
「研究の目的(課題)」は、日本人口高齢化の道程と超高齢化の現実を、観察時期を18世紀後期~21世紀初頭まで(約250年)とし、江戸期と近現代の人口資料を(地域を定めて)接続・対比して、解明することである。 「研究実施計画」は、以下の3点である。第1:研究フィールドの80歳以上長寿者数、最高齢者の年齢・人数を、高齢者書上(近世・近現代資料)を用いて把握する。第2:当該地域の(超高齢者を含む)人口構成を復元/活用し、基礎人口指標(老年人口指数、老年化指数)を計算、処遇上の連続と非連続とを追跡する。第3:江戸期の人別改制度と現代の戸籍・住民登録制度とを対照、住民把握上の盲点(例えば脱漏人口、不明高齢者)を解明し、制度改善の基礎知識を創出する。 平成24年度の「研究の成果」は、次の4点に要約できる(対象地域は仙台藩領)。 ①宝暦12(1762)年の90歳以上庶民(256人)が、基礎人口(実測値:51万人)に占める比率は0.5‰、最高齢者は111歳(女子)である。②嘉永2(1849)年の80歳以上庶民(2,481人)が、基礎人口(推計値:46万人)に占める比率は5.4‰、90歳以上庶民(134人)に占める比率は0.29‰、最高齢者は102歳(女子)である。③人口構造の復元は嘉永2年の5ヶ村・人口3,000人について行い、ピラミッド型構造をえた。また「超高齢人口指数」は、生産人口を17~61歳(1,900人、満年齢で16~60)とし、超高齢者を82歳以上(満81)者とすれば、1.32となった(100人で超高齢者1人を扶養した計算)。 ④江戸期の人数改制度はよく整備され、資料(人別帳、高齢者書上)や数字(年齢、集計値)の信頼性は極めて高いと判明(代表者は既に、仙台藩は寛永20(1843)年から人別調査を開始したことを実証した)。戸籍からの脱漏は、最初期はともかく、18世紀には克服。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究の目的」は、上記「研究実績の概要」に記した通り、日本人口高齢化の道程と超高齢化の現実とを把握し、そこで判明する問題点を明示して、その解決に資する知識を創出することである。 研究の方法は、①観察の対象時期は超長期:約250年間(18世紀後期~21世紀初頭まで)とし、②研究素材は江戸期は人別帳、近現代は人口統計資料(国勢調査、住民基本台帳データなど)を活用、③地域を定めて長期観察をおこなう、としている。「研究目的の達成度」は研究方法に規定されるところ大であるゆえ、以下の点検・評価・理由は研究方法に対応させて記す。 「自己点検・評価」その1:観察期間。現在までに達成した観察期間は江戸期約100年間である。「自己評価」は、この期間の仙台藩の超高齢者については、人数や基礎人口比率の算出、人別帳による年齢確認など、概ね完了したというものである。「理由」は、研究対象を近世資料に限定し、目的に合致した良質資料を入手・整理できたためである。その2:研究素材。仙台藩については近現代の人口資料、岡山藩についても同種資料の入手は、時間的・労力的制約があって未達成である。「理由」と「自己評価」は、研究組織(実働人員)は1人であるから、これはある程度まで許容されうるというものである。その3:地域を定めた長期観察。この項目の点検・評価は、現時点では困難と判断する。理由は、本研究は開始からようやく1年が経過したが、近世文書の解読・整理・データベース構築・分析・論文化など、膨大な基礎作業・執筆作業に時間を割く必要があるからである(今後も同様と見込んでいる)。 以上1~3を考慮すれば、現時点での「自己点検による評価」は、概ね妥当と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
「今後の推進方策」は今のところ、以下4点に要約できる。 ①岡山藩の高齢者書上資料の整理・データベース化を推進、人別帳を収集: 目的は、2012年度の研究成果=仙台藩高齢者データと比較対照し、日本列島の東・西で超高齢者数・比率に違いがあるか否かを解明・検証すること。②江戸時代の人別改制度・人別帳研究を推進し、近現代戸籍制度・人口調査への移行過程を解明: 目的は、近世データと近・現代データの接続にあたり、接続の妥当性を「資料論・資料批判」の視点から確認・確証すること。2013年度はまず、仙台藩の人別改制度・人別帳の精密性(信頼性)研究を先行させる。手元収集資料をフル活用して確証、成果公表を目指す(公表理由は、それは歴史人口学分野で現在も「後回し」にされた課題であから、確証のneedが極めて大きい課題であるから)。③近現代人口統計資料・高齢者表彰記録の検索・所在確認: 宮城県+岩手県南地域(旧仙台藩領)の資料につき所在確認、閲覧条件の調査などを行う(個人情報保護法の規制対象でるか否か、対象であれば開示方策を検討)。同作業は、岡山県についても行う。④高齢者処遇を記した文字記録(質的資料)の収集:数量的データは高齢者・超高齢者の人数と比率を明らかにする。しかし、彼らの質的情報(暮らしぶり、衣・食・住、病気・介護、家族構成、地域サポートの有無)は、記録類から判明する。そこで、徳川幕府が編纂した「官刻孝義録」や各藩の同種資料を、日本史家の先行研究を参照しつつ、サーベイする。江戸期超高齢者の処遇状態は断片的にはわかっている。しかし、数量アプローチと質的アプローチとを結合すれば、そのイメージは格段に鮮明にできると判断する。 以上4点の「課題の推進方策」は、作業の進捗状態により課題に優先順位をつけ(あるいは方策自体を再考し)て、柔軟に変更・運用しつつ、当初の「研究目的」を達成すべく実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
「次年度に使用予定の研究費」=あり:「当該研究費が生じた状況」は以下4点に集約できる。①旅費に未執行分がでた。理由(状況)は、今(2012)年度は陸前高田市・吉田家文書、大船渡市・千田家文書の、人別帳・超高齢者関係文書の収集を計画した。しかし、両者とも震災からの復旧途上にあり、受入体制が整わず不十分となった。②研究室の丸ごと移転。研究室のOA機器、全資料、その他一式を自宅に収容「仮研究室」を立ち上げた。この立ち上げに相当の時間を割かざるを得なかったため、研究費の執行が期限切れとなった。③研究インフラ整備の一つ(カラープリンターの設置)を見合せた。高額トナー費を賄いきれない、研究目的の達成に直結するより重要な費目(下記を参照してほしい)が判明したので。④HP作成を見合わせた。理由は、先行経験者によればメインテナンス時間が相当必要、ウイルス対策のため常時・細心の注意を払う必要、運用コストが生じる、研究に決定的ダメージを受ける書き込み等は回避したいので。 「翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画」:主としてマイクロフィルムのデジタル化費用。これについて説明する。今回、超高齢者書上に記された老人の存・否確認は、結果の信頼性を担保するため不可欠の作業ゆえ、細心の注意を払った。具体的には、人別帳/過去帳フィルム数十リールと「人別帳整理シート」数百枚とを頻繁に閲覧、確認作業を行った。その結果、この作業は極めて膨大な時間・体力を要し、研究成果の創出を阻害する主原因の一つと判断した。そこで「次年度使用額」に研究費の一定額に、前年度未執行額などを加え、マイクロフィルムと「人別帳整理シート」のデジタル化を計画する。 なお、上記を計画しても、翌年度以降の全体的計画に支障はでない。理由は、フィールド調査の比重は徐々に西日本に移る、人件費はできるだけ節約する、その他経費の縮減などによる。
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