研究課題/領域番号 |
24530681
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
高木 正朗 立命館大学, 産業社会学部, 非常勤講師 (70118371)
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キーワード | 超高齢者 / 百寿者 / 数え年 / 人別帳 / 長寿者調べ / 国勢調査人口 / 地域人口 / 千分率(‰) |
研究概要 |
この研究の目的・計画は以下の3点である。第1に、研究フィールドの80歳以上長寿者数、最高齢者の年齢・人数を、高齢者書上(近世・近代資料)を用いて把握する。第2に、当該地域の(超高齢者を含む)人口構成を復元し、基礎的人口指標(老年人口指数、老年化指数)を計算、処遇上の連続と非連続とを追跡する。第3に、江戸期の人別改制度と現代の戸籍・住民登録制度とを対照、住民把握上の盲点(例えば脱漏人口、不明高齢者)を解明し、制度改善の基礎知識を創出する。以上である。 第1の目的にたいして本(2013)年度は、前年度「実績概要」に記した成果に江戸、諏訪、山城、宇和島のデータを加え、さらに明治21~平成22年(120年間)の超高齢者比率を計算した。その結果、日本の超高齢者の比率は、18世紀中期~20世紀後半まの約220年間ほぼ一定であり、総人口の1%(10‰)程度との仮説をえた。 第2の目的については現在、仙台領の長期の人別帳6ヶ村分程度のデータベースを作成中である。次(2014)年度はそれに基づき、基礎的人口指数を計算し、かつ現代の指数と対比・接合して、日本250年の人口構成の推移を復元。人口高齢化と「無縁社会」化への道程を鮮明にしたい。 第3の目的については、上記の目的1・2と並行して、以下の作業をおこなった。陸前高田・吉田家「定留」は、2011年3月11日に被災・水没し、現在、国立国会図書館で修復中であるが、そこには仙台藩・人別改制度にかかわる重要文書を多数収録している。そこで代表者は鋭意それら文書を翻刻してきた。その結果、人口調査精密化への仙台藩の取組み(例えば、現住人口と本籍人口の乖離の防止=脱漏人口の回避策など)は、総務省(国勢調査)の回避策と比べて決して遜色はなかったが、前近代国家に特有の困難さが見て取れた。 今後の計画として、上記3点をより深化・展開させ研究目的の達成に努める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的3点に対応する「達成度」(自己評価)は以下のとおりである。 目的1の達成度:おおむね65‰程度と評価している。残り40‰は、福井藩・宇和島藩データを解読・整理・計算することで達成できると見込んでいる。 目的2の達成度:おおむね25‰程度と評価。理由は長期人別帳のデータベース化に膨大な時間を費やしているため。2014(平成26)年度中に65‰程度まで達成可能と見込んでいる。 目的第3の達成度:おおむね45‰程度と評価。人別改法令・通達は、藩政200年の歴史のなかで、改良をかさね近代に至る(改良・修正の理由は主として、人口の流動化(移住・移動)と人口激減などである)。史料解読にともなう大きな困難を克服して、人口調査の日本的「原型」を鮮明にすること、つまり基礎作業が必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
研究の目的3点に対応する「今後の推進方策」(一部「計画の変更」)は以下のとおり。 目的1の方策(一部変更):当初は西日本の比較データとして、岡山藩文書の収集・活用を計画した。しかし、諸般の事情により変更、福井藩(越前国)と宇和島藩データを活用するよう、調整することにした。おもな理由は、両者とも基礎人口(村・町人口、藩人口)が翻刻・公表済みだからである(この変更にともなう課題等は、両者とも「西日本」の事例であるから、今のところない)。目的2の方策:人別帳データベースの作成(年次別に個々人の年齢を入力、データベースを作成すること)を、着実にすすめる(人口の年齢別構成を計算する方法は、これ以外にない)。目的3の方策:これは質的な研究を目指すものである。ゆえに上記2と同様、地味な作業を営々とかさねる(人別改制度の変遷をフォローできる資料は、これ以外に見当たらない)。
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次年度の研究費の使用計画 |
主な理由は、マイクロフィルムのデジタル化作業に進捗の遅れがあり、作業・業者委託を進めていたものの、平成25年度中に支払手続きまでを完了させることができなかったため。 使用計画(費目)は以下の2点である。1)マイクロフィルムのデジタル化業務に、平成25年度未使用額全額と平成26年度予算中の25万円程度を、あわせて使用する。2)残りの35万円程度を、地域史・古文書情報の収集や資料の閲覧・撮影のため、愛媛県松山市・宇和島市などへの旅費や、通信費として使用する計画である。
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