研究課題/領域番号 |
24530686
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研究機関 | 大阪国際大学 |
研究代表者 |
三木 英 大阪国際大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60199974)
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研究分担者 |
沼尻 正之 追手門学院大学, 社会学部, 准教授 (10300302)
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キーワード | ハラール / 福音主義教会 / ベトナム仏教 / 台湾仏教 / テーラワーダ仏教 / フィリピン系新宗教 |
研究概要 |
イスラームについては「ハラール(イスラームにおいて‘許されている’の意)」を鍵概念として、調査を遂行した。日本とイスラーム世界との交流は、ハラール産品の製造・輸出またハラールを意識した来日者応接により活性化するからで、それが延いては国内在住のムスリムの立場にも影響すると考えるからである。具体的にはハラール認証を行なう(マスジドを含む)機関を大阪・東京さらには仙台に訪ね、認証業務の詳細や認証を求める日本企業の現状について、探っている。 また、在日フィリピン人の宗教にも着目した。フィリピン独自のキリスト教系新宗教であるイグレシア・ニ・クリストの大阪・名古屋・品川教会で参与観察し、北東アジア管区本部(東京)では管区長に面談して、基礎的なデータを集積している。さらに、東日本大震災被災地で暮らすフィリピン人女性の宗教生活にも迫った。 ペルー人による福音主義的キリスト教会の日本での存在を見出したことも、収穫であった。ブラジル人による同種教会についてはよく知られ、研究報告も多くを数えるが、ペルー系のそれは本研究が「発見」したといえる。今後、ブラジル教会と比較しての研究を進める所存である。 さらに、ベトナム仏教寺院が最近になって複数設立されたこと、台湾四大仏教のうちの一つである中台禅寺が日本に進出したことも見出した。日本と同じ大乗仏教の上記の寺に日本人がどう関わるか、精緻な調査が必要となろう。加えて、テーラワーダ仏教が日本人の帰依者を集めていることにも注目し、京都府下でテーラワーダの思想・儀礼を採りいれた某伝統仏教寺院の調査を行なっている。こうした寺院運営が昔ながらの日本人信者にどう影響するのか、目の離せないところである。 平成25年度の調査研究はニューカマー宗教の着実な展開を強く確認することとなった。それら宗教が抱える問題点にアプローチすることが、次年度の大きな課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに愛知・岐阜・三重・滋賀におけるイスラーム・ブラジル系福音主義教会にアプローチし成果を挙げているが、当初は存在が確認できなかったペルー系の福音主義教会も「発見」して、その集会に何度か参与しデータ蒐集を行なうことができた。また金沢・仙台といった中核都市におけるイスラームと日本社会の関係を調査することも当初プランとしてあり、その目的はある程度達成したが、それに加えて熊本マスジドや福岡マスジド、大塚(東京)マスジドによる日本人・日本社会に向けての取り組みについてもデータを蓄積することができた。 2013度の研究のなかで、当初は調査対象と予定されていなかったところと接触できたことは、我々の調査の精度が上昇していることを示唆していよう。これが、一年間の研究を概括して「順調」と判断する理由である。
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今後の研究の推進方策 |
三つの目標を掲げて、調査に取り組む。一つはイスラーム研究であり、日本におけるムスリム・コミュニティと日本社会との関係の動向に注意を払いつつ、「ハラール」を介して進行する国際交流の行方を把握しようと試みる。 第二は新来のキリスト教への着目である。ブラジル・ペルー・フィリピン・韓国から進出してきたキリスト教の現状については、まだ不明な点も多く、一層の調査が求められるところである。その実態把握に努めつつ、ニューカマーの今後を推測するための鍵を、探し出さねばならない。 そしてニューカマー仏教の調査が、第三の目標である。テーラワーダ仏教に惹かれ瞑想を実践し自己探求を行う日本人、「人間仏教」の名の下で布教への意欲を示す台湾仏教僧侶、ようやく自前の寺と僧侶を得たベトナム人の宗教生活が、調査対象となる。
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