本研究は、薬物問題対策の世界的潮流であるハーム・リダクションが〈公衆衛生モデル〉として受けいれられる一方、そこに医療化が観察され〈医療モデル〉のリバイバルが認められる現状を踏まえ、それら二つの〈モデル〉の比較を通して、薬物をめぐる社会問題の定義と対策の現代的傾向を明らかにすることを目的とした。研究の結果、〈公衆衛生モデル〉と〈医療モデル〉の相克はより広い施策とその文脈を支える機能を果たし、施策の維持とその普及を可能にしていること、〈モデル〉のある部分が環境に応じて交換可能であることが、ハーム・リダクションの利用可能性を保証し、多くの国で異なった観点での導入を可能にしていることが明らかになった。
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