研究課題/領域番号 |
24530691
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研究機関 | 福岡女子短期大学 |
研究代表者 |
加藤 朋江 福岡女子短期大学, その他部局等, 准教授 (90296369)
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キーワード | 子育て / 社会学 / 原発事故 / 首都圏 / 自主避難 / 放射性物質 / 母親 / 家族 |
研究概要 |
1 具体的内容は以下の通りである。 (1)実施した研究内容:最も比重の大きいものとして、生協総合研究所の協力を得てインターネットモニターである生協組合員を対象におこなった質問紙調査がある(2013年9月実施)。その内容としては1)震災直後の気持ち、2)国の安全基準、国や生協の取り組みについて、3)放射性物質についての意識について、であった。回答者が生協組合員という偏りはあるが、有効回答数1,724であり、はば広い地域の住民をカバーすることができた。 (2)明らかになったこと:2012年4月における国の放射性物質の基準値引下げについては、東北・関東地域の住民や年齢が高い層ほど知識をもっている。居住地域の放射線量についても、東北・関東の住民で不安が高い。また「食品購入時に産地を選ぶ」と全体の5割弱が回答すると共に「特に避ける行動をしていない」者も4割に及ぶ。調査時においては震災から2年半を経過しているが、原発事故由来の残留放射性物質については気にする層と気にしない層とで大きく二分されていることがわかった。 (3)アウトプット:論文としては「首都圏からの原発避難」(2013年8月、庄司洋子編『親密性の福祉社会学』東京大学出版会)。研究ノートとしては「なぜママたちは西へ逃げたのか?―原発事故以降の食と子育ての意識変化を考える」(2013年8月『生活協同組合研究』)、「組合員の放射能汚染忌避意識について」(2014年3月『生活協同組合研究』)がある。 2 意義・重要性としては、原発事故の収束が済んでおらずいまだに様々な情報が錯綜する現状において、被災地以外の地域に住む子育て層の放射性物質への向きあい方について指摘できた点である。今後はさらにその属性について詳細に検討を続けてゆきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書では平成25年度においては質問紙調査を主として行うことを記述している。その際に回収目標が500ケースであった。昨年度の実施状況報告書には生協総合研究所のインターネットモニター制度を利用することを書いており、当該年度において有効回答1,742と当初の予定を上回る調査が実施できた。居住地域や年齢層も散らばっており、分析しがいのあるデータが取得できたと思われる。 申請書に記入したもう一つの予定である、原発事故についての文献のデータベース化は進めることができなかったが数多くの公刊された文献・論文を入手することができた。新聞記事の収集についてはこれからの課題である。 昨年度の実施状況報告書においては追加の聞き取り調査とあり、これについては進めることができなかった。ただし、研究代表者は東日本大震災被災者支援の一環として定期的に開催されている福岡mama's cafeへの参加を続けており、そこでの参与観察で十分な知見を得ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
1 学術論文の作成:平成24年度における聞き取り調査、平成25年度における質問紙調査で得られた知見をもとに学術論文を作成し、日本家族社会学会や関東社会学会等の機関誌に投稿する。 2 学会報告:日本家族社会学会や日本社会学会等での年次大会で口頭発表をおこなう。 3 報告書の執筆:聞き取り調査におけるケース記録や原発事故・放射性物質関連の書籍・論文の情報も含めて、平成24年度以降の研究で得ることのできた知見を盛り込んだ報告書作りをおこなう。
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次年度の研究費の使用計画 |
質問紙調査の経費として計上していた金額が、実際にかかった金額より多かったためにこれだけの差額が生じた。 口頭発表を含めた学会報告のための出張費、および英文論文作成のための校正費と翻訳料として使用する予定である。
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