通常,欧米の労働組合の単位が産業別労働組合とされるのに対して日本のそれは企業別労働組合とされる。たしかにドイツ,北欧諸国においてはこの理解が妥当するようである。しかし,フランスの労働組合全国組織,いわゆる5大労組であるCGT、CFDT、CFTC、CGT-FO、CFE-CGCにおいて,日本できかれる「欧米においては産業別労働組合が単位」という理解が妥当するのは主にCFTCであると思われ,CGTは対照的に企業別乃至事業所別労働組合が進展しているようである。 その場合,日本の企業別労働組合とCGTで大きく異なるのは,日本ではナショナル・レベルの産業別労働協約がほぼ皆無であることと同一企業内に複数組合が存在することが稀であること,フランスではナショナル・レベルの産業別労働協約が存在し,かつ同一企業乃至事業所に複数組合が存在するのがむしろ常態であることだ。 企業乃至事業所内の労働組合組織が組合支部section syndicalであるか,あるいは単位組合syndicatであるかは,一つには,企業別協約の締結に関係する。労働法上,組合支部には法人格が認められておらず,したがって企業別協約の締結主体であるためには法人格を有する単位組合syndicatでなければならない。また,複数事業所をもつ企業において各事業所別組合が調整組織coordinationを形成する場合がある。 そして5大労組のいずれか1つの単位組合でも合意すれば他が合意しなくても企業別協約が締結される。したがって企業が企業別協約を有利に締結しようとする場合に,企業側が複数組合が存在するという事態を積極的に活用する余地が存在し,現実に深く介入する場合がある。例えば日本と同様に企業側によって新たな企業別乃至事業所別労働組合の結成が模索されるケースなどである。
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