本研究の目的は、国境を越える人の移動に対応した社会保障の在り方を検討するため、ドイツを対象として、国境を越えて移動する人々が社会保障に関して直面する問題、それを解決するための制度等の分析・検討を行い、それを基に、日本において生じうる問題点を明らかにするとともに、その解決のための具体的な政策の選択肢を示すことにある。 平成26年度においては、まず、稼得活動に従事しないEU市民のEU域内での自由移動と社会給付の受給との関係について、分析・検討を行った。その理由は、EU市民にはEU域内での自由移動が認められていることから、ブルガリア及びルーマニアなどの所得水準が低いEU加盟国から社会扶助を受給する目的でドイツなどに移動する人が増加し、それによって不適切な財政負担が生じることへの懸念が高まっているためである。この成果については、平成26年10月に開催された社会政策学会第129回大会において「国境を越える人の移動と社会給付の受給」と題する報告を行い、社会保障政策の専門家との討議を行った。また、これを踏まえて、「EU市民のEU域内での自由移動と社会給付の受給」と題する論文を発表した。 さらに、平成25年度までの研究成果及び上記の研究成果を基に、研究協力者との意見交換も行ったうえで、国境を越える人の移動が社会保障に関してもたらす問題とその解決のための対応策について研究結果の取りまとめを行った。
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