研究課題/領域番号 |
24530697
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
石原 剛志 静岡大学, 教育学部, 教授 (10340043)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 学童保育 / 高度成長期 / 大阪 / 共同保育 / セツルメント |
研究概要 |
本研究は、高度経済成長期、大阪における学童保育運動の展開過程について、父母自身に担われた共同学童保育所づくり運動とセツルメントによる学童保育運動という二つの系譜の運動の相互連関に着目し、具体的に明らかにしようとするものである。 本年度は、この時期の大阪における学童保育運動を現在に至る日本における学童保育史に位置づけるために、運動の組織化や制度の成立を指標として仮説的に次のような時期区分を試みた。(1)敗戦から1962年頃まで(児童福祉法における「その他の児童の保育」から「学童保育」へ:今川学園における実践と園長三木達子の行動)、(2)1962年頃から1972年頃まで(学童保育運動の成立と国・自治体施策のはじまり)、(3)1972年頃から1990年頃まで(学童保育運動の全国組織化・制度化要求と都市児童健全育成事業)、(4)1990年頃から現在(放課後児童対策事業の施行と「学童保育の法制化」)。 なお、戦前における学童保育については前史として、社会事業や戦時厚生事業のなかに未分化のままに三つの形態で捉え、位置づけた。三つの形態とは、(a)母子保護特に軍事委家族の母子保護の一環として行なわれた形態、(b)スラムのなかでの不良化防止を目的としてセツルメントや隣保事業の一環として行なわれた形態、(c)アジア・太平洋戦争の戦時下、母親による生産増強と子の不良化防止を目的として戦時厚生事業として行なわれた形態、である。 日本の学童保育に関する実証的な歴史研究は、近年ようやく着手されはじめたばかりの段階であり、通史も書かれていない。この成果は、今後の学童保育(史)研究のための基礎的な作業としての意義を持つものと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
関連施設に所蔵されている資料の調査の結果、その量が当初想定していたものよりも大きいことが判明した。そのため、資料目録の作成は本年度中には公表できる段階にまでは到達できず、そのこととも関連して資料の撮影については次年度以降に実行することとなった。そのため、本年度の研究実施計画に照らしたとき「やや遅れている」こととなる。 上記の作業の変更とは別に、本研究の対象地域と対象時期について日本の学童保育史のなかに位置づける作業、現行制度の実際や課題について明らかにすることについては、計画以上に進展を見た。研究の目的の達成度としては、順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
(1)本年度、実施予定であった、次年度において財団法人大阪保育運動センター所蔵学童保育関連資料の目録作成について作業を進めるとともに、専門業者による財団法人大阪保育運動センター所蔵学童保育関連資料の撮影を実施する。いずれも、本年度と次年度の両年度かけて実施の予定であったものであるので、本年度予算執行できなかったものについては、次年度にあわせて執行する。 (2)本年度の研究実施計画にあげた内容については次年度実施し、あわせて次年度の研究実施計画にあげたものについても計画通り実施する予定である。 (3)本年度、仮説的に行った時期区分の有効性についても、さらに資料の解読・分析によって検証していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度予定していた財団法人大阪保育運動センター所蔵学童保育関連資料の目録作成にかかる旅費、専門業者による財団法人大阪保育運動センター所蔵学童保育関連資料の撮影について、次年度、実施・執行する。 次年度に予定している計画については、当初の予定のとおり実施・執行する。
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