研究課題/領域番号 |
24530700
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
杉崎 千洋 島根大学, 法文学部, 教授 (60314613)
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研究分担者 |
中村 明美 武庫川女子大学, 文学部, 准教授 (20390180)
小野 達也 大阪府立大学, 人間社会学部, 准教授 (30320419)
細羽 竜也 県立広島大学, 保健福祉学部, 准教授 (40336912)
越智 あゆみ 県立広島大学, 保健福祉学部, 助教 (60445096)
金子 努 県立広島大学, 保健福祉学部, 教授 (70316131)
正野 良幸 京都女子大学, 家政学部, 助教 (90514167)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 退院支援 / 患者参加 / 規定要因 / 医療ソーシャルワーカー / HealthWatch |
研究概要 |
I.日本の退院支援への患者参加を規定する要因の質的研究:臨床レベルの分析 退院に向けての医療提供過程での意思決定に患者が参加するための規定要因を医療ソーシャルワークの枠組みを通して明らかにするとともに、医療場面での意思決定に患者が参加する取り組みが患者の満足度や退院後の予後に与える影響を質的に探索することを目的に聞き取り調査を実施した。調査対象者は、A病院から自宅に退院した高齢患者10人とその退院支援にかかわった医療ソーシャルワーカー4人である。A病院では病棟単位で退院の仕組みがシステム化されているが、患者・家族が退院支援過程へどの程度参加できたかの受け止めには差異がみられた。患者の自己決定権の保障については、介護者・家族のいる患者の場合、患者自身の意向表明よりも同席した家族の意向表明の方が強い印象を受けた。 II.イギリスにおける退院支援への患者参加を促進する要因研究:制度・政策レベルの分析 保健省HP、研究者からの情報収集などによりキャメロン政権下の医療政策、参加政策動向を把握した上で、平成25年度に予定しているシェフィールド調査の目的、手法などを検討した。The Health and Social Care Act 2012によりHealthWatchが設立された。前身のLocal Involvement Networkはネットワークであったが、Health Watchは組織であるため、患者参加を促進する可能性がある。シェフィールドHealthWatchは、2012年12月にイングランド内に設立された75の先行事例の1つである。調査の主眼はLocal Involvement Networkが患者参加に果たした役割とその評価におく。新組織の調査は、前身のどこをどのように継承したか、前身と比較してプラスとマイナスは何かなどの整理を中心に行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
I.日本の退院支援への患者参加を規定する要因の質的研究:臨床レベルの分析 当初の計画通り、A病院退院患者、医療ソーシャルワーカーを対象とした調査を実施できた。また、質的研究法による分析にも着手している。これらは、当初の計画通りであり、順調に進展している。 II.イギリスにおける退院支援への患者参加を促進する要因研究:制度・政策レベルの 分析 主な調査対象であるHealthWatchに関する情報の収集、前身のLocal Involvement Networkとの異同の整理はおおむねできた。ただ、前身に関する情報収集と分析、とくに退院、退院支援に係る患者の苦情や問題解決にどの程度かかわり、支援を展開していたのか、成果と課題は何かなどは把握・分析できなかった。平成25年度の課題としたい。 Iは順調に進展、IIはおおむね順調であるがやや遅れている面もあることから、総合評価として「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
I.日本の退院支援への患者参加を規定する要因の質的研究 次の3点を意図して、平成24年度調査結果の分析を引き続き行い、退院支援過程における患者参加の規定要因を明らかにする。①医療・福祉サービスの利用を患者自身がマネジメントできるように援助すること、②こうした援助により医療サービス利用に対する患者の自己決定権を保障する取り組みの1つになること、③医療場面における患者参加の取り組みが医療に対する患者の満足度や退院後の生活に与える影響を明らかにすること。退院支援過程において患者の自己決定権を保障するには、患者本人が意向を表明できるような支援が必要であるが、これについては、家族がいない場面で患者の話を聞きとるなどの即時的に可能な支援と、一定のかかわりを通して患者が自己決定権を行使できるように自らの力を身に付けていく支援とが考えられる。さらに、こうした支援を可能にするシステム構築における課題と専門職の支援課題を明らかにしていく。 II.イギリスにおける退院支援への患者参加を促進する要因研究 前半は文献考察などにより、シェフィールド調査の枠組み、視点の精緻化を図る。調査は2つのレベルで実施することから、それぞれの調査目的、方法などを確定する。具体的には、各機関でソーシャルワーカーらに実施する面接調査、資料収集などの項目を整理する。レベルの1つは、平成24年度に検討したシェフィールドHealthWatchの他に、行政などの患者の権利擁護、情報提供を行う機関レベル(制度・政策レベル)である。もう1つは、実際に患者らがそれらを利用する急性期病院(北部一般病院など)などのレベル(臨床レベル)である。9月には現地調査を行う。後半は、収集したデータ・資料などの分析を行う
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、主にII.イギリス・シェフィールド調査の旅費への支出が大半になる。他に、その事前準備のための研究会開催(その際の講師謝礼などを含む)に使用する予定である。 I.日本の退院支援に関する研究費用は、主に平成24年度研究費の繰越金により行う。平成25年度予算から支出するのは、学会報告のための旅費などである。繰越金が発生した理由は、次の3つの事情により、調査対象者などに支払う謝金額が当初予算より少なかったためである。①聞き取り調査への協力患者数が、調査への不同意、同意後の体調不良により当初計画より減少した。②調査協力者に対しても、負担軽減のため聞き取り回数を減らした。③ICレコーダー録音の同意を得られなかった患者もいたため、テープ起こし時間数が当初計画より減少した。
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