研究課題/領域番号 |
24530703
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研究機関 | 名寄市立大学 |
研究代表者 |
吉中 季子 名寄市立大学, 保健福祉学部, 准教授 (70434800)
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キーワード | シェルター / DV被害者 / 生活再建 |
研究概要 |
今年度は、DVの被害から避難して自立の実態の一端を明らかにするために、相手と別の暮らしを始めた際に、被害者自身の仕事の変化の実態を調査した。方法は、関西圏にある民間シェルターの約10年間の入・退所記録より、入所前と退所後の仕事について分析を行った。 その結果、第一に、民間シェルターに一時保護として入所したDV被害者は、入所時より退所時に有職率が大幅に減少したことである。加害者のもとから避難するために離職の必然性が、ほとんどのDV被害者にみられた。たとえ、同じ職種を選んだとしても、一旦離職して別の職場を探している。 第二に、退所時点においてなお、一定数のDV被害者は支援の必要な状態にあることが認められた。緊急一時保護の退所後、福祉施設などへのへの入所をもって退所する者は、その後の支援は次の施設で行っていくことになる。その先の場所で、今後の支援について再考させられる。また、家族や友人宅などに依存可能な者は、経済的な理由から、住宅費のかからないところである、インフォーマルな理解者に支援を求めていた。 第三に、DV被害者となった入所者にとって、再就職活動に困難な要因が多いことがある。入所期間の短期間では、再就職活動に至ることが困難なことが読みとれる。入所中に求職活動をした者は2割に過ぎなかった。DV被害者にとって、急き立てられるような自立のための就労支援は無意味であり、それ以外に解決すべき問題を多く抱えているのである(離婚問題、子どもの問題など)。そのため、就労以前の支援課題の解決が優先され、就労には至らずに退所しているケースが多く見受けられた。 また、退所時に生活保護の受給者数が顕著に増加していた。これらは、以上のような離職の必然性、心身ともに回復までに時間が要すること、解決すべき問題が多いこと、再就職の困難性など、すべての要因が関係した結果といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
・連絡・調整等が不十分になっており、実際に出向いてヒアリングをするなどの調査に時間を取ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
・最終年度である本年度は、主にDV施策の地域的な特徴を見出すために、北海道内のシェルターのシェルターのヒアリングを実施したいと考えている。それらをふまえて、施策とソーシャルワーク、DV被害者が自立を阻害する課題とを結び付け、検討を行いたい。 ・調査の時期は、最終年度でもあるため、授業等のない夏季を中心に行うつもりである。
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次年度の研究費の使用計画 |
調査等に計画が遂行でいなかったため、旅費相当分が残額として生じた。 少額であるため、使用計画は問題なく遂行できる見込みである。
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