本研究は、DV被害当事者における生活再建のあり方と自立支援策を探ることを目的とした。そのために、当事者に関する社会福祉・社会保障のサービスの実態と課題を明らかにし、直接支援に関わる民間支援団体と地方自治体における支援の実態を明らかにしようと試みた。最終年度である本年度は、DV被害当事者、緊急一時保護先である母子生活支援室と民間シェルターにそれぞれヒアリングを行った。 ①DV被害当事者へのインタビューからは、生活を立て直したのちにおいても、加害者からの追跡、子どもの育ちなどの精神的な不安や病気に悩まされたり、現実に住居を変える例も一定数存在した。 ②緊急一時保護の委託を受けている母子生活支援施設へのヒアリングでは、施設にとって単発的である緊急一時保護の受け入れとその対応については、十分な対応ができていないという回答が多々あり、不慣れさからくる課題も明らかになった。 ③北海道内を中心に行った民間シェルターの聞き取りにおいては、直接民間団体に避難してきた女性を緊急一時保護として取り扱う、北海道独自の方法がとられ定着していること、しかしながら財政面と支援スタッフの不足といった共通の課題があった。それでも行政から一時保護委託先としての役割は大きく、北海道内だけでみても民間シェルターへの一時保護委託は全体の約6割も占めていた。 また、最近の傾向として、一時保護の件数増加の背景に、当事者の安全性を優先するために警察の早期判断が誘導していることがあったが、その一方で当事者の意思が後回しにされるといった課題もみえてきた。
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