研究期間(2012-2014)においてベトナム国内のハンセン病患者群(患者および元患者、以下(元)患者、n=143)および一般群(n=146)を対象に、包括的健康尺度であるSF-36v2を用いてQOL調査を実施した。その結果、一般群と比較して(元)患者の身体機能、日常役割機能(身体)、身体の痛み、活力、日常役割機能(精神)が有意に低いという結果となった。この結果を踏まえ、研究期間最終年度ではベトナム国内のハンセン病専門治療機関において(元)患者のケアにあたるスタッフから聞き取り調査を行い、(元)患者のQOL向上のための具体的な方策についてのディスカッションを行った。その結果、QOLの向上のためには自立支援プログラムが有効であること、重度の身体障害が発生している(元)患者の場合、社会復帰を希望しない者が多く含まれることから、自立支援プログラムの拡充と施設内での処遇向上が今後の検討課題として明確化された。 また対象となった多くの(元)患者が貧困状態にあることから、その社会経済状況の改善および所得創出のための自立支援プログラム(社会経済的リハビリテーション)が必須と考えられた。調査対象機関の一つではマイクロクレジット方式を利用した自立支援プログラムが行われているが、参加者である(元)患者から聞き取りを行った結果、現行プログラムに対する高い評価と同時に具体的な不満点や改善要望が提出された。自立支援プログラムを実施している病院と実施していない病院で(元)患者のQOLのスコアを比較したところ、前者の(元)患者のQOLが有意に高いという結果となった。本研究ではこれらの点を調査対象機関にフィードバックし、新たな自立支援プログラム草案の作成を行った。
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