研究実績の概要 |
平成27年度においては、以下の研究成果が得られた。理論的研究では技法論における支援者の質問技法のカテゴリー化とその記述法が定式化された。支援者の質問法は、複数の意味・意図を伝達する言語行為として定義され、質問法を区分する記号を用いて、複数の意味・意図を併記する方法を提示した。その結果、変容手順に基づいた、支援者の技法使用法について、論理的な考察の方法が示された。さらに支援者の系統的な技法の使用と、クライアントがそれへの応答として記述した差異化された言語行為との連関を考察することが可能となり、クライアントの問題解決ストーリーの生成過程を論述する方法が示された。その研究成果の一部が記載された論文が、国際雑誌(Universal Journal of Public Health, Vol.4(2))に掲載された。 さらに、本研究で開発された支援モデルを用いた国際共同研究が開始された点も、今年度の成果と考える。北米の研究者と共同で臨床実践活動を行い、その成果をまとめた共同執筆論文を国際雑誌に投稿する準備を進めている。北米の研究者との間で、変容理論、手順、技法使用法について議論した上で、社会的関係性が非常に限定されているクライアントの生活支援に取り組み、クライアントと関係がある他者との間に、新たな解決のネットワークを構築した。その事例の支援過程を、北米の研究者および国内の連携研究者との共同執筆により、論文化に向けて議論を継続している。 本研究期間での研究を通して明らかになった課題は、クライアントの訴える問題を解決していくために、訴えを要素化する際の基本的な要素(意味構成と行為選択)を、意味構成、行為選択と期待という3つに再構成する必要性があること、その3つの要素をもとにした、変容論、技法論、そして効果測定論の体系化が必要になった点である。
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