研究課題/領域番号 |
24530719
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北星学園大学 |
研究代表者 |
田中 耕一郎 北星学園大学, 社会福祉学部, 教授 (00295940)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 英国障害者運動 / 社会モデル / UPIAS |
研究概要 |
平成24年度の課題は、(1)英国における「障害」の社会モデルの源流にあるUPIAS創設者ポール・ハントのライフヒストリーを検証しつつ、彼がUPIASを結成するに至る内的必然性と社会モデルの認識を獲得するに至る経緯を明らかにすること、(2)UPIAS結成から「組織の目的と方針」が公表されるに至る18カ月にわたる組織内のフレーミングの議論を辿りつつ、社会モデル的認識の萌芽を獲得する過程を検証することであった。 (1)の課題については、既に論文としてまとめ、その英訳も完了している。英訳論文については、英国リーズ大学の障害学センター Centre for Disability Studiesのアーカイブに掲載していただいたが、日本語論文については今年度、北星学園大学社会福祉学部紀要に投稿する予定である。 また、(1)に関連して、ポール・ハントとともにUPIASを理論的・実践的に牽引したディビス夫妻のライフヒストリーを辿る必要が生じ、こちらについても平成24年度中に書き上げることができた。こちらの論文も英訳をほぼ完了し、現在、校正中であるが、完成次第、インタビュー調査にご協力いただいたディビス夫人にご一読いただく予定にしている。 (2)については、組織内部の回覧文書の分析は既に終えることができたが、まだ論文の完成には至っておらず、現在、執筆中である。8月頃までには書き上げ、こちらも今年度の北星学園大学社会福祉学部紀要に投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた課題(1)については、一昨年度、英国にて国外研修中に収集したUPIASの内部回覧文書やポール・ハントが入所していたチェシャー・ホームの機関誌、及び故ポール・ハント夫人ジュディさんへのインタビュー・データを基に、既に日本語・英語の論文の執筆を完了してている。このうち、英語論文は英国リーズ大学の障害学センターのアーカイブに掲載され、日本語論文については今年度、北星学園大学社会福祉学部紀要に投稿する予定である。さらに当初予定していなかったが、UPIASのコア・メンバーだったディビス夫妻のライフヒストリーについても、英国滞在中のディビス夫人へのインタビュー・データ及び関係資料を基に日本語での論文を仕上げている。こちらも英訳をほぼ完了し、現在、校正中である。 課題(2)については、組織内部の回覧文書の分析は既に終えることができたが、まだ論文の完成には至っておらず、現在、執筆中である。8月頃までには書き上げ、こちらも今年度の北星学園大学社会福祉学部紀要に投稿する予定である。 課題(1)を進める中で、当初の予定にはなかったディビス夫妻のライフヒストリーを執筆する必要が生じたため、課題(2)への着手が遅れたが、全体的にほぼ順調に研究は進んでいると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は現在執筆中の課題(2)を完成させ、その後、UPIASが初めて社会モデルの概念を公表する契機となった、Disability Allianceという組織との合同会議とその記録の分析をすすめ、さらに、当初の計画通り、1970年代後半に生起した「UPIASの危機と再生」をめぐる議論の分析を進めたい。 また、あわせて、ポール・ハントやディビス夫妻とともに、UPIASの理論的・実践的コア・メンバーとして活動し、その後、英国障害学の研究者としても多大な功績を残したヴィック・フィンケルシュタインの足跡を辿るため、今年度末(2014年2月末)には、再度、渡英し、関係者へのインタビュー調査を実施する予定である。 平成26年度には、当初の予定通り、「ポール・ハント亡き後からUPIAS解散に至る経緯」に取り組む。UPIASの内部回覧部署や関係者へのインタビュー・データを基に、これまで明らかにされることはなかったUPIAS後期における内部的議論と、国内外のラディカルな障害者組織との関係性などを辿りながら、UPIASがその活動に終止符を打つまでの経緯について検証したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、UPIASを含め、英国の障害者運動史に係る文献・資料、及びUPIASが活発な活動を展開した1970年代から80年代に係る英国の障害者政策に係る文献・資料を購入するための費用として200千円を見込んでいる。 また、2014年2月末に予定している英国でのインタビュー調査に係る渡英費用として、300千円、その際の調査通訳料として200千円、さらに論文英訳料として同じく200千円を見込んでいる。 その他として、印刷用紙・USB等消耗品代として15千円、各種学会参加費として360千円、複写・印刷・郵送◇として100千円を見込んでいる。
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