平成26年度は、イギリス社会モデルの源流にあるとされる「隔離に反対する身体障害者連盟」(以下、UPIAS)の組織形態の構造化、及び「施設問題」に関するフレーミングに焦点を当て、「隔離に反対する身体障害者連盟における組織形態の構造化に関する検証」、及び「隔離に反対する身体障害者連盟における初期フレーミングの分析」と題する論文にそれぞれまとめ、北星学園大学社会福祉学部紀要に投稿した。 前者の論文では、UPIASがその結成初期において一つの「社会」としての運動組織を形作ってゆく過程に焦点を当て、1)組織の発生(UPIAS創設者ポール・ハントによる組織結成の呼びかけ)、2)正会員資格の規定、3)組織運営の原則、4)チャリティ団体からの距離化と差異化という4つの観点から、その形態的構造化をめぐる議論を検証した。 また、後者の論文では、社会運動論のフレーム分析の枠組みを援用しつつ、UPIAS結成初期18か月間の組織内議論における「意味形成」の動的過程を検証した。 研究期間全体を通して得られた成果は、1)1960年代から80年代にかかる「障害」をめぐる政治、2)ポールハントのライフヒストリーとディスアビリティ体験、3)デイビス夫妻のディスアビリティ体験と統合化を求める実践、4)UPIASの組織形態の構造化、5)結成初期フレーミングの検証の執筆である。これらに加えて今年度中に、6)『障害の基本原理』における言説分析、7)UPIASの危機と再生を執筆し、さらに来年度は、8)UPIASの死、9)まとめを執筆し、遅くとも2017年度中には全体をとりまとめ、書籍としての出版を目指したい。
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