研究課題/領域番号 |
24530723
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 駿河台大学 |
研究代表者 |
渡辺 裕子 駿河台大学, 経済学部, 教授 (10182958)
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研究分担者 |
南林 さえ子 駿河台大学, 経済学部, 教授 (80189224)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 震災ボランティア / 防災訓練 / 防災意識 / ボランティアサポート募金 / 費用 / 便益 |
研究概要 |
1.研究の目的:東日本大震災の被災地から遠隔地に住む人々が、どのような支援行動・意識を示したか、また、どのような防災意識を持っているかを明らかにすることを、目的とした。阪神・淡路大震災ボランティア調査委員会調査(サンプル数10,000人)によれば、阪神・淡路大震災の際の活動者は、その6割が兵庫県と大阪府の居住者であった。しかし、ボランティアへの活動要請が長期化している東日本大震災では、被災三県だけでなく、首都圏に住む人々を活動に取り込む方策を検討する必要がある。そのため、遠隔地の人々の行動や意識を明らかにすることは意義があるといえる。 2.研究の方法:埼玉県飯能市で実施された2012年度九都県市合同防災訓練の参加者を対象に自記式調査を実施した。回答者は市内14学校区の訓練会場において、避難所設営訓練や小学校での児童引き渡し訓練に参加した1,609名である。調査実施日は2012年9月2日(訓練当日)~30日である。質問項目は、東日本大震災被災地への協力、防災訓練に対する評価、防災意識・知識、個人の基本的属性(年齢・性別・同居家族・職業)、日常的な地域活動等である。 3.調査の結果:東日本大震災への協力として、1)2011年3月~2012年8月の募金額、2)被災地ボランティアの望ましさ(活動期間と自己負担額が異なる4つの仮想的活動ケースに対する評価等)、について質問した。防災訓練参加者を「福祉ボランティア型」「社会教育型」「地縁型」「地域活動不参加型」に類型化したところ、「地域活動不参加型」は募金額が際だって少なく、被災地ボランティアにも否定的であった。これに対して、「福祉ボランティア型」は最も募金額が多く、被災地ボランティアへの活動意向も高かった。ただし、補助金付きの活動に比べて全額自己負担の活動に対しては評価が低かった。被災地ボランティアに対する支援金の重要性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.調査方法の変更、内容の一部変更:申請当初は、埼玉県から東日本大震災の被災地ボランティアに参加した人を対象に、調査を実施する予定であった。方法については阪神・淡路大震災における先行研究を踏襲し、ボランティア保険(天災型)加入者に郵送調査を行う予定であったが、埼玉県の社会福祉協議会から同意が得られず、この方法は断念することとなった。しかし、九都県市合同防災訓練の参加者を対象とすることについて、埼玉県及び飯能市(2012年度訓練の当番自治体)から協力が得られることとなったため、防災訓練に参加する地域住民と小学校の児童保護者を対象とすることに変更した。 調査対象者の変更に伴い、調査内容についても一部変更の必要が生じた。すなわち、防災訓練の参加者には被災地ボランティアへの参加経験のある人が多くはなかったため、活動経験に関する質問ではなく、遠隔地のボランティア活動に対する仮想的質問をすることとなった。また、防災訓練を企画・実施する埼玉県・飯能市の要望を取り入れ、防災訓練に対する評価や防災意識等の質問を追加した。 2.次年度研究の前倒し実施:被災地ボランティアに対する調査が実施できなかったこともあり、共同募金会の「ボランティアサポート募金受給団体リスト」を用いた二次的分析を2013年1月頃から開始した。このリストでは各団体の所在地、活動内容、活動先、配分額等の情報が掲載されている。これにより、被災三県のボランティア団体と遠隔地からのボランティア団体の活動期間・内容等の活動動向の違いの分析が可能である。ボラサポ募金は2011年5月~2014年4月まで13回に渡って募集が行われるが、2012年度は第1回~第9回の基本情報のデータベース作成に着手した。そしてこのうち、第1回・第2回の震災直後と第8回・第9回の震災後1年半後の応募団体のデータをサンプルとして、小規模な予備的分析を試みた。
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今後の研究の推進方策 |
1.防災訓練参加者調査の分析(2013年4月~12月):調査実施協力機関(飯能市危機管理室、市内14学校区の小学校・行政センター)向けの基本的な集計結果の報告はすでに2012年度に行っており、今後は詳細な分析を行う。具体的には、「防災知識と防災訓練の評価」「想定される避難所運営の問題と課題」「遠隔地からの被災地ボランティアや義援金・支援金に対する意識と行動」の3課題に分けて、論文を作成する。 2.ボランティアサポート募金の配分の分析(2013年4月~):活動を終えたボラサポ募金受給団体の報告が、次第に共同募金会のホームページ上で公表され始めている。そこで、2012年度に作成した支援金受給団体のデータベースにこれらの情報を追加した上で、第1回~第9回受給団体の分析を行う。ただし、活動申請書類と活動実績報告には内容の変更も多く生じているため、すでに入力した情報との齟齬のチェックをいかに行うか等の方法の再検討が、必要である。しかし、このようなデータの作成が可能になれば、活動の内容、活動期間、そのうちの活動日数、ボランティア述べ人数等の情報が得られるため、ボランティアによって得られる便益や、費用・効率等が分析できる。また、2013年度中に第10回~第12回の受給団体の決定が行われるため、新たな団体をデータベースに追加する。なお、最終の助成は第13回で2014年4月の発表が予定されているため、全件データによる分析は2014年度に行う。 3.防災意識の育成に関する研究(2013年9月~):申請時には予定していなかった、2012年度の防災訓練調査から派生した追加的研究課題であるが、防災訓練の育成に関する研究にも取り組む。具体的には、文部科学省大都市大震災軽減化特別プロジェクト(京都大学防災研究所の林春男ら)により開発された「防災ゲーム:クロスロード」を実践的に使用し、その成果等を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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