研究課題/領域番号 |
24530727
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
渡邉 敏惠(楠永敏惠) 聖徳大学, 心理・福祉学部, 准教授 (90363788)
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研究分担者 |
高尾 公矢 聖徳大学, 心理・福祉学部, 教授 (50167483)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 重度失語症 / 社会参加 / 拡大・代替コミュニケーション |
研究概要 |
重度失語症者は、言語能力とともに社会的役割を喪失し、閉じこもりになる可能性が非常に高いとされている。しかし、調査が困難であるために、重度失語症者の社会参加の実態は十分に把握されてこなかった。重度失語症者が社会参加するためには、実態を踏まえた有効な援助と社会の理解が不可欠である。本研究は、拡大・代替コミュニケーション(AAC)の検討を通じて、重度失語症者の視点に立った新しい社会参加のあり方を促進することと、重度失語症者に対する社会的な理解が深まることをめざしている。 平成24年度は、失語症者全体の社会参加の実態やAACについての先行研究のレビューを行った。また、新しいAACの機器等について情報収集を行った。さらに、失語症者の患者団体の活動状況を把握し、現状や課題を検討した。 社会参加の実態については、特定非営利活動法人全国失語症友の会連合会による失語症者の全国調査(2008,2009)はあるが、重症度が区分されておらず、重度失語症者の実態の把握は難しい。社会参加を促す失語症会話パートナーの役割や育成の状況、失語症会話パートナーによる社会参加の実例などは報告されてきている。それ以外の社会参加の事例報告はいくつかあるものの、AACの利用状況を示した報告は多くない。特に、新しいAAC機器を用いた社会参加の報告はほとんどない。患者団体においても、患者会の集会などによる社会参加の機会は設けられているが、重度失語症者に対するアプローチが困難な場合が多く、必要な対象に援助できていない可能性が高いということがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度の目的は、重度失語症者の社会参加の実態の詳細と課題を明らかにすることと、重度失語症者の社会参加に用いられているAACの利用状況と課題を明確にすることであった。そのために、重度失語症者の社会参加とそれを促すAACの利用状況についての実態調査を行う予定であった。しかし、先行研究のレビューや予備調査を中心に行うこととなった。その理由は、早急に調査をするよりも、まず調査の項目や対象選定などの準備に時間をかけたほうがよいと判断したためである。また、研究協力者として実態調査に協力してもらう予定であった研究者が別の仕事に就いたため、協力が得られなくなったことも理由の一つである。ただし、実態調査を平成25年度に行うことは想定していたことであるため、今後の研究遂行に重大な支障はきたしていないものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の計画よりも遅れてはいるが、最終年度にゆとりをもたせていたため、内容の大幅な変更はせずに計画を実行する。 平成25年度には、重度失語症者の社会参加とそれを促すAACの利用状況についての実態調査を実施し、その分析を行う。重度失語症者にかかわる医療や福祉の専門職者に聞きとりや調査協力を依頼する。また、平成26年度の研究に向けて、対象者の選定や研究方法の準備を進める。 最終年度の平成26年度には、重度失語症者を対象にして、社会参加の介入研究を行う。また、重度失語症者に対する援助実践や施策の検討と発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、特に人件費・謝金と交通費の使用が少なかった。その理由は、予定していた研究者の協力が得られなかったためと、実態調査に充てる交通費がほとんどかからなかったためである。 課題としてまず、調査や資料整理等を補助する人材の確保があげられる。その点は、大学の学生にすでに依頼してあり、協力が得られる見込みである。また、平成25年度の調査は、医療や福祉の専門職者に聞きとりや調査協力を依頼しながら進めるため、謝金が必要となる。旅費については、調査や学会報告の旅費としての使用を計画している。それ以外は、初期の計画通りに進める予定である。
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