本研究は、犯罪被害者等に対する総合的支援策を検討するため、更生保護における犯罪被害者等施策(心情等伝達制度、相談・支援)、民間被害者支援団体の支援活動に焦点を当て全国調査を実施した。 更生保護における上記の制度について、現場担当者を対象にした調査結果から、被害者等の個別状況に応じた配慮のもと実施されており、一定の成果を上げていることが把握できた。被害者等施策がさらに機能していくためには、被害者担当部署と加害者処遇部門とのスムーズで密な連携態勢が確保され、被害者等施策自体が更生保護官署で重要な位置を占めることが必須である。 民間被害者支援団体については、全国被害者支援ネットワークに加盟する48団体(センター)の協力を得て、質問紙調査A(センターの責任者を対象)、B(センターの直接支援担当者を対象)、C(センターを利用した被害者等を対象)を実施した。 調査A,Bの結果から、センターでは情報提供、心理的サポート、公判等付き添い、関係機関の紹介など広範な支援活動が被害内容に応じてきめ細かく実施され、支援の蓄積がうかがわれた。ただ、直接支援の職員は常勤がきわめて少なく、専門職というよりボランティア中心で直接支援が成り立っているセンターが殆どで、専門性の確保とボランティアの活用態勢は今後の課題である。センターの運営財源の確保、被害者支援の広報・啓発についても、民間団体が抱える問題として認識され改善される必要がある。調査Cの結果からは、センターに対する具体的な改善点が上がった。 更生保護の被害者等施策と民間支援団体の両分野とも現場担当者は他機関等連携の必要性を強く感じており、司法機関のみならず多くの関係機関・団体等と連携している実態も把握できた。公的分野が担うべき支援、民間が力を発揮できる支援について、一定の枠組みをつくり協働体制を促進し、被害者側に「見える形」として提示していくことが望まれる。
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