研究課題/領域番号 |
24530729
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研究機関 | 昭和女子大学 |
研究代表者 |
根本 治代 昭和女子大学, 人間社会学部, 講師 (70386340)
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キーワード | 離職 / 知的障害者 / 就労支援 / ソーシャルワーク / 自己効力感 |
研究概要 |
本研究の目的は、 知的障害者の離職後就労支援に焦点を当て、生活を再構築するうえで生じる環境との相互作用の変容過程を分析し、自己効力感の獲得に基づく就労支援モデルを構築することである。本人の自己理解や自己肯定感に着目した支援展開は、知的障害者の離職を機に本人の主体的生活を再構築するうえで有効な方法である。モデル構築においてはこれまでに自己効力感に関する説明概念として使用されてきた自己評価、自己肯定感、コンピテンスの変容過程に焦点を当て、具体的な支援方法として提示していく。研究初年度である平成24年度は、就労移行支援事業所における離職後支援事例として、本人、家族、就労支援者から25事例のインタビューデータを収集した。平成25年度は、1年間の就労移行プロセスとして5事例の、本人、家族、就労支援者、企業雇用者へのインタビューデータを収集した。25事例では、離職後支援の内容分析をとおしてソーシャルワークへの示唆を明らかにすることができた。追加の5事例においては、具体的な支援プロセスから自己評価、自己肯定感、コンピテンスに焦点を当てた相互作用分析をとおして、本人の自己効力感の獲得プロセスを明らかにすることができた。最終年度である平成26年度は、25事例の離職事例から離職後就労支援モデルを体系化していく。企業雇用者との相互作用に関するデータが分析するうえで更なる追加が求められ、平成26年度の7月頃に企業雇用者に向けたアンケート調査を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に実施した調査の進捗状況は以下のとおりである. ①平成24年度8月~9月に実施した就労移行支援事業所を利用する5事例の,本人・就労支援者・雇用者への2回目のインタビューを実施した。離職後から就労移行支援の利用、再就職へと就労移行した1年間のプロセスを聞き取ることができた。 ②本人と家族の承諾を得て、個別支援計画書、本人の手記、カンファレンスへの参加等、分析するうえでの豊富なデータを収集することができた。離職から再就職、あるいは生活支援への移行も含め、継続的な支援プロセスを明らかにするうえで、有効な質的データを得ることができ分析していくうえでの達成度は高いと考える.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成26年度は、これまでに収集したデータを以下の方法を用いて分析する。 ①平成24年度に収集した就労支援者による離職後支援25事例の分析と結果を、投稿論文として完成させるため、文献研究を加えていく。言語データにおいては、テキストマイニングによるテキスト分析、コレスポンデス分析等の、文脈に関して再現可能で、かつ妥当な推論を行うために、計量テキスト分析を加えていく。 ②平成25年度に収集した5事例から、本人の自己効力感をもつうえでの阻害要因、促進要因を質的データ分析法に基づき分析する。分析と結果を、投稿論文として完成させるため文献研究を加え、学術学会等で発表する。また追加調査として、企業雇用者側の離職対応に関するデータとして、アンケートによる量的調査を年度半ばで実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に就労移行支援事業所への離職後支援に関する量的調査を実施する予定であったが、個別事例による相互作用分析をとおして企業雇用者への計量的分析の必要性が明らかとなった。そのため平成26年度に実施予定の追加調査を見込み、次年度使用額に反映させた。 平成24年度~25年度に実施した調査の分析に、文献研究を加えるため、書籍代として使用する。分析結果を、投稿論文、学術学会発表等で成果報告していくため、翻訳代、学会参加費、旅費等で使用する。また追加調査として、企業雇用者へのアンケート調査を平成26年度の半ばで実施する。その際の、郵送代、旅費、印刷代等で使用していく。
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