研究課題/領域番号 |
24530732
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研究機関 | 日本社会事業大学 |
研究代表者 |
藤岡 孝志 日本社会事業大学, 社会福祉学部, 教授 (30199301)
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キーワード | 愛着 / アタッチメント / 攻撃性 / 身体感覚 / 共感疲労 / バーンアウト / 包括的養育者―子ども関係性構築プログラム / 愛着臨床アプローチ |
研究概要 |
本研究の目的は、虐待を受けた子どもたちに見られる攻撃的行動(特に身体的・言語的暴力)に対する対処を考える際に、子どもたちの感情調整や養育者との関係構築をプログラムの中に取り入れている包括的養育者―子ども関係性構築プログラム(「愛着臨床アプローチ」含む)が有効であるのかどうかを検証することである。 1、包括的養育者―子ども関係性構築プログラムの適用を3か所の施設で試みた。その結果、攻撃性のなかの反応性攻撃性は、対処可能となることが複数名の職員によって確認された。しかし、自己発現性攻撃性は、予測不能な側面もあり、また、深い情動的な「怒り」体験を伴うものであり、職員への対処プログラムとして修正が必要であることが示された。 2、これらのことと援助者支援の観点から、特定支援の方略(アタッチメントの観点による関係性構築、「重要な他者」と位置づいた職員との情動調整)についても検討を行った。その結果、子どもの身体感覚への注目や身体に生じる情動への調整機能を促すことが技法上必要であることが示唆された。また、関係性構築については、子どもの中にあるボーダーライン心性に関する知識と対処技術が必要であることが考察された。以上から、メンタライジング、及び身体感覚への対処方略を促す技法を、プログラムに取り入れることが必要であることが示唆された。 3、これらを踏まえた、暫定的な支援プログラムを、今後、複数の児童養護施設での研修で実施し、効果を測定することが必要であることが考察された。 これらを通して、援助者支援を念頭においた子どもの攻撃性への対処プログラム(最終版)を作成することが必要であることが示唆された。包括的な養育者―子ども関係性構築プログラムの標準化のための最終版に向けての修正が意識化できたと評価でき、今後の援助者支援に寄与できるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、虐待を受けた子どもたちに見られる攻撃的行動(特に身体的・言語的暴力)に対する対処を考える際に、子どもたちの感情調整や養育者との関係構築をプログラムの中に取り入れている包括的養育者―子ども関係性構築プログラム(「愛着臨床アプローチ」含む)が有効であるのかどうかを検証することである。 2年目の当該年度では、本研究の初年度において作成した包括的養育者―子ども関係性構築プログラムの適用を3か所の施設で試みた。その結果、攻撃性のなかの反応性攻撃性は、対処可能となることが複数名の職員によって確認された。しかし、自己発現性攻撃性は、予測不能な側面もあり、また、深い情動的な「怒り」体験を伴うものであり、職員への対処プログラムとして修正が必要であることが示された。 これらのことと援助者支援の観点から、共感疲労、共感満足、バーンアウトリスクの評価、特定支援の方略(アタッチメントの観点による関係性構築、「重要な他者」と位置づいた職員との情動調整)についても検討を行った。その結果、子どもの身体感覚への注目や身体に生じる情動への調整機能を促すことが技法上必要であることが示唆された。また、関係性構築については、子どもの中にあるボーダーライン心性に関する知識と対処技術が必要であることが考察された。以上から、メンタライジング、及び身体感覚への対処方略を促す技法を、プログラムに取り入れることが必要であることが示唆された。 これらのことは、当初の目標にも合致することである。全体を通して、援助者支援の観点に立った子どもの攻撃性対処プログラムの作成は、順調に進んでいるものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
以上の2年目の成果を踏まえて、子どもー養育者関係性構築プログラムの特定化、標準化を試み、それらを、複数の児童養護施設に適用することで、そのプログラムのさらなる汎用化を行っていく。 最終年度となる3年目の課題は、プログラムの汎用化に向けての最終チェックと根底でそれを支える理論モデルの構築と考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する研究費について生じた理由;当初予定していた研修計画の一部が翌年度以降になったため、それに合わせて、研究費の使用を控えた。 翌年度以降の研究費と合わせた計画;複数の児童養護施設での適用を考え、最終版のプログラムの資料などをツール化して印刷する。研究費はその費用に充てる。また、それらを通して行った研修の成果を、データ解析し、モデルの適合度を検討していく。モデル構築は、最終年度の大きな課題である。さらに、このような職員の研修が、子どものウェルビーイングや職員の共感疲労やバーンアウトリスクにどう影響しているのかということを子どもへのアンケート、面接調査、職員へのアンケート、面接調査などを通して行っていく。その際には、十分な倫理的な配慮を行う予定であう。施設への旅費等、実施に対する費用を研究費から支出する。
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