本研究の目的は、施設入所をしている子どもたちの怒り、攻撃性、暴力の現状と課題を明らかにし、そのうえで、虐待を受けた子どもたちに見られる攻撃的行動に対する対処を検討することであった。本研究を通して、子どもの攻撃性に対処するために、両者の相互性に注目する「養育者-子ども相互性」支援システムとして提案するに至った。 1、本研究において作成したプログラムの適用を複数の施設で試み、その結果を考察した。こどもの攻撃性は、関わる職員によって異なる様相を呈し、多様な養育環境の中で、職員という社会的、人的環境が子どもたちの怒り感情をアフォードし(ギブソンのアフォーダンス概念の養育環境への適用)、そのことが子どもたちの施設における情動調整のきっかけになることが示唆された。 2、システムにとって、構成要素としての職員への対処プログラムが重要である。援助者支援の観点から、共感疲労、共感満足などの評価、特定支援の方略(アタッチメントの観点による関係性構築、「重要な他者」としての職員との情動調整、職員自身のFR行動への気づき)についても検討を行った。それらは、職員の内省だけでなく、子どもたちの内面を理解し、その世界を語ったり、身体的な内動によって理解していくことで、子ども自身のメンタライジング能力が助長され、次第に、怒りなどの情動を身体性を含めた言葉として理解し調整出来るようになっていくものと考えられた。 3、これらを通して、援助者支援を念頭においた子どもの攻撃性への対処プログラム(最終版)を作成することが必要であることが示唆された。包括的な養育者―子ども関係性構築プログラムの標準化のための最終版(「養育者-子ども相互性」支援システム)(メンタライジング、及び身体感覚への対処方略を促す技法含む)が構築できたと評価でき、今後の児童福祉施設における子ども支援、援助者支援に寄与できるものと考えられる。
|