研究課題/領域番号 |
24530737
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
大島 隆代 法政大学, 現代福祉学部, 助教 (70523132)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 地域生活支援 |
研究概要 |
研究初年度である平成24年度には、新潟県中越地震災害後および東日本大震災後に被災地に配置された、主として仮設住宅に住む被災者の地域生活支援に関わる専門職の支援の実態を探索的に明らかにする作業を中心に実施した。 新潟県内のA市社会福祉協議会に保管されている専門職(生活支援相談員)の実践記録の分析を行ったところ、災害後の仮設住宅入居時の被災者への見守り支援やサロン活動の実施により、要援護者および要援護世帯の把握を行い、医療・保健や福祉関係機関につないだり、地域における住民同士のつながり構築を実践していることが明らかになった。また、仮設住宅を退去後、復興公営住宅や再建した自宅に転居する時期に、退去後に居住する地域との連絡調整や福祉ニーズを抱える個人および世帯の把握と支援継続のための関係機関連携を実践していた。本事例については、現在実践が進行している東日本大震災の地域生活支援に対して大きな示唆を得ることとなった。 東日本大震災後の地域生活支援に関しては、専門職配置が開始されてから半年から一年と日が浅いことと、各被災自治体により専門職の配置システム等に違いがあることから、被災地域によるシステムや実践内容の相違や現状の課題を中心にヒアリングする作業を行った。 岩手県、宮城県、福島県を中心とした被災地の地域支援について、聞き取りが可能な関係者に依頼し、実践の現状と課題を伺ったところ、地域によって配置システムや専門職の研修方法、関係専門職との役割分担などにかなりの違いがあることが明らかになった。また、専門職の意識としては、被災した個人および世帯への支援のみならず、地域づくりや地域再生への実践課題や復興のあり方を模索することや、実践を継続するにあたってのスーパービジョンの必要性が指摘された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、災害における地域生活支援の実践を解題する作業を、主として被災支援での実践経験のある専門職への聞き取りを実施することで行ってきた。 新潟県中越地震災害に関しては、実践記録の保管がなされていた機関に研究協力を依頼し、詳細なデータを分析することが可能となった。また、分析結果が今後の災害支援に寄与することが期待される。 東日本大震災後の実践に関しては、専門的な実践が開始されて間もないため、実践計画やアドミニストレーションの課題など中心に、現地での状況把握をすることとなった。当初の研究計画では、可能であれば専門職へのアンケート調査を実施したいと考えていたが、東日本大震災によるダメージが甚大であることや、現地の混乱が継続していること等から、今年度の実施は見送った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究についても、当初の研究計画および初年度の研究実績を鑑みつつ、災害後の地域生活支援のあり方や方法論の体系化を目指すことを目的として推進していく。具体的には、東日本大震災の被災地域でのフィールドワークや参与観察などを中心として行う。 震災にかかる支援実践の研究事業は、社会福祉学領域での先行研究が少ないことや、東日本大震災後の支援が現在でも進行中であることにより、特に調査介入に関してはナーバスな要素があることが否めない。研究倫理に則り、当該対象者や地域への負担を考慮しつつ研究遂行をしていくことに留意したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究課題である「災害時支援におけるソーシャルワークおよび社会開発に関する研究」の研究遂行に関して、社会開発に関する国内外の先行研究を解題するとともに、わが国における災害時支援の方法論を体系化することを試みる。 研究フィールドへの関わりとしては、新潟県中越地震災害後の支援実践記録の解題については、研究協力者である新潟県内の社会福祉協議会職員の協力を得て、データ分析や学会での報告を計画している。 東日本大震災後の地域生活支援にかかる専門職の実践については、宮城県内のB市社会福祉協議会で参与観察を実施する許可を得られたため、現地での調査研究も継続していく。
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