研究課題/領域番号 |
24530737
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
大島 隆代 法政大学, 大原社会問題研究所, 研究員 (70523132)
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キーワード | 災害支援 / 東日本大震災 / 被災者 / 地域生活支援 / ソーシャルワーク |
研究概要 |
研究二年度目にあたる平成25年度には、東日本大震災後に被災地に配置された被災者への生活支援を担う専門職の実践に関して、フィールドにおける参与観察調査およびヒアリング調査で得たデータを分析しまとめる作業を中心に行った。 宮城県内にある被災地のB市社会福祉協議会に平成25年4月から配置された地域福祉コーディネーターによる被災地の仮設住宅およびみなし仮設住宅に居住する被災者への支援の実態を、参与観察による業務分析結果およびインタビューデータの文字化後の質的分析の結果を総合的に考察した。また、分析にあたり、地域福祉コーディネーターが支援を展開するうえで、被災者が抱える個別的な課題への実践と地域組織化などといった地域課題への実践をどのように統合化あるいは連結化しているかという分析テーマを設定した。 研究作業を総合的に考察したところ、地域福祉コーディネーターが災害後に配置される時期によって、既存の個別援助職(保健師、介護支援専門員等)との連携に関する課題や、個別支援と地域支援の統合化の方法にも差異が生じるということが明らかになった。また、地域福祉コーディネーターの配置元である市町村社会福祉協議会による専門職へのアドミニストレーション機能、人材育成や財源確保などの機能を整備していくことが必要であるということが示唆された。 研究初年度に重点的に行った地域を基盤とした福祉実践の方法の理論的解題によって得られた知見と、本年度の実地調査にて得られた研究結果の比較検討も行った。結果、実践方法として既に示されているいくつかのモデルと被災地における地域を基盤とした生活支援の方法には、共通して理解できる部分もあるが、新たなモデルを構築することも喫緊の課題になるであろうということが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は初年度に行った文献および先行研究の解題および複数地域におけるヒアリングの結果を鑑みたうえで研究フィールドを絞り、参与観察とインタビューによる詳細なデータを収集できた点で進展があったと評価できる。また、実践に関する先行研究から理論的限界や新たな実践モデル構築の意義も示された。 東日本大震災後の被災者生活支援は現在も途上であり、今後の政策も含めて実践領域での動向にも注目される。研究対象である被災地機関(社会福祉協議会)の許可および承認が得られれば、引き続き研究を推進していく意義はあると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に研究フィールドとして関わった宮城県内のB市社会福祉協議会では、研究者による次年度の関わりを承諾してくれており、現在も被災地支援が進行中であることから、現場のかたがたとの共同研究の実施も考えられる。また、被災者や現地関係者の了解が得られれば、アンケート等による量的調査や被災者へのヒアリング調査も実施できる可能性がある。この点については、研究倫理に則り、研究対象者への負担を充分に考慮したうえで実施の可能性を探りたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は研究フィールドを一箇所に絞ったため、複数の研究フィールドにおける実地調査に至らなかった。また、アンケートなどによる量的調査の実施ができなかったため、研究対象を縮小したインタビュー調査を行ったため。 当初、複数の研究協力者と共にフィールドに出向いての研究調査を予定していたが、研究代表者ひとりによる作業を進める結果となったため、計画外の次年度使用額が生じた。 次年度は、現在までの研究に何らかの形で関わってくれた協力者とともに、東日本大震災による被災地を複数箇所設定して訪問し、実地研究を行う予定である。また、今年度に重点的に調査を行った現地の支援者を招聘して、実践内容および研究内容を報告する機会を設けたいため、旅費等の調査費用を執行していく計画である。
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