研究課題/領域番号 |
24530738
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
柳沢 敏勝 明治大学, 商学部, 教授 (30139456)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | サードセクター / 社会的経済 / 連帯経済 / コミュニティ / 協同組合 / 社会的企業 / 第三の道 / 社会福祉 |
研究概要 |
この研究の目的は、急速に高齢化が進む近未来の社会における国民の福祉のあり方、とりわけ市民連帯に基づく社会福祉サービスのあり方について考察するところにある。この目的を達成するために本研究がとくに調査対象として取り上げるのがイギリスにおけるサードセクター組織である。 今年度は、インフラストラクチャー組織であるNational Council for Voluntary Organizations (NCVO)本部やサンダーランドにあるSustainable Enterprise Strategies(SES)でのヒアリング調査を実施した。インタヴューの主たる目的は労働党から保守党・自民党連立政権への政権交代によって、サードセクター組織への対応がどのように変化したかについてである。連立政権のBig Society構想により、前政権のサードセクター支援策が後退しつつあることが判明した。またサードセクター組織であるBromley by Bow Centre、Account 3(いずれもロンドン)、Sunderland Health Care Association (SHCA) 等でのヒアリングに加え、東ロンドン大学UELの研究スタッフGladius Kulothingan氏等と研究打ち合わせを行った。 他方、日本のサードセクター組織調査の一環として、過疎化、高齢化の進む中山間地において、地域の人々が率先して地域おこしの活動を展開し、コミュニティ・ビジネスのひとつの模範となった事例(静岡県くんま)のヒアリングと資料収集を行った。これらの調査を踏まえ、雇用の非正規化の進展とともに貧困化が進む日本社会の現状について分析し、学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的を達成するための仮説は、市民連帯による福祉サービス領域を介在させることなしに目前にある高齢社会を支えることは困難であり、サードセクターがきわめて重要な役割を果たすということである。また主たる研究方法はヒアリングを中心とする実態調査であり、この調査を補完するために前労働党政権下での「第3の道」政策、ならびに現政権の掲げる「ビッグソサエティ」政策に関して文献研究を行うこととした。 概要にも記したように、市民連帯型福祉サービスの担い手であるサードセクター組織について、予定通り、支援組織と福祉実施組織とのヒアリング調査を実施した。なお、現政権の「ビッグソサエティ」政策についての文献研究では文献の収集等を推し進め、考察をさらに深める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
イギリスのサードセクター組織、とくに今年度ヒアリング調査を実施したSunderland Health Care Association (SHCA)をはじめとするホームケアに関わる社会的企業と、地域交通サービスの担い手として重要な役割を果たしているコミュニティ・トランスポート社会的企業でのヒアリング調査を実施する。他方、Social Enterprise UKなどの全国組織、およびSESに代表される地方での中間支援組織でのヒアリング調査を引き続き実施する。とくに中間支援組織についてヒアリング調査を実施する目的は、わが国に欠けている市民連帯経済の重要な環を組織および機能の点から解き明かすことである。 第2に、政策文書の分析は、「第三の道」から「ビッグソサエティ」への政策転換がサードセクター組織の活動にどのような影響を与えているかについて知るためである。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の使用目的は大きくは2つある。ひとつがイギリスのサードセクター組織のヒアリング調査のための費用である。全国ならびに地方の中間支援組織、およびホームケアとコミュニティ・トランスポート・サービスのための社会的企業のヒアリングを実施するにあたっての調査費である。もうひとつが政策転換に関わる文献研究のための費用であり、主に文献・資料購入費として充当する予定である。
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