1.戦後障害者福祉における「相談支援」機能の形成過程について、措置制度から利用契約制度への移行の政策展開も視野に、実践における「継承と転換」の視点から検討。障害者自立支援法以降、「相談支援」は障害種別を越えて位置づけられるが、今日意思決定支援でも注目される知的障害者の相談に焦点を当てた。 2.措置制度から利用契約制度直後まで相談経験のあるソーシャルワーカー(全国からスノーボール方式で11人選定、2012年8月~2014年6月)の聞き取り調査から、質的データ分析により実践特徴を構造的に把握。724のコード化から「障害相談の特徴」「相談のスタンス」「相談の視点」「相談員としての背景」「相談員としての自己研鑚」「相談員としての条件」「制度の変化」「利用者の制度活用の変化」「行政組織の変化」「制度環境の変化と課題意識」「制度課題への挑戦」の11カテゴリを導き出した。これらは相互に影響し合いながら実践展開されている。 3.資料・文献研究により障害者福祉制度・サービスの歴史的展開から「行政機関相談成立期の「ソーシャルワーク」浸透動向、地域生活支援への転換に伴う「相談支援」の原型形成など、特徴を捉えた。 4.カテゴリを基に、現在「相談支援事業」に従事する相談支援専門員らへ意識調査実施(198郵送調査、回収率49.0%,2014年11月)し比較分析。 5.「継承と転換」を捉えるにあたり、知的障害者をめぐる「当事者の代行機能の必要性と困難さ」「本尊重から始める支援」、「当事者団体との協働関係」「主体的な研修機会」「利用者の制度活用の変化」などの要素に着目する必要性を把握した。知的障害当事者インタビュー調査は端緒にあり、相談担当者側からの相談支援機能形成を障害当事者側から検証を深める課題も残される。本研究成果の公表として書籍『戦後障害者福祉における「相談支援」形成過程の研究』(仮題)発行準備中である。
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