研究課題/領域番号 |
24530746
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 富山国際大学 |
研究代表者 |
村上 満 富山国際大学, 公私立大学の部局等, 講師 (10555197)
|
研究分担者 |
大平 泰子 富山国際大学, 公私立大学の部局等, 講師 (00555188)
門田 光司 久留米大学, 文学部, 教授 (50269081)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | スクールソーシャルワーク / エンパワメント / コンピテンシー / 定着支援 / 総合評価 / 尺度開発 / カルテ |
研究概要 |
本研究は、全国のSSWerの学校教育現場への“定着支援”に焦点を当て、SSWerが確実に定着していくために、プロセス評価とアウトカム評価から総合的にSSWerの質と量の評価を試みる総合評価支援システム(富山モデル)の構築をその最終的な目的とする研究である。そこで平成24年度は、SSWerが保有すべきエンパワメントの検討と評価スケールの開発に向けた検討とSSWerが身につけるべきコンピテンシー概念の検討およびコンピテンスシートの開発に向けた検討を中心に行った。具体的な成果としては、以下の3点である。 (1)国内外のSSWer等の論文の収集作業とスケール等の開発に向けた項目の抽出→医中誌をはじめとするデータベース等から「スクールソーシャルワーク」「コンピテンシー」「エンパワメント」「尺度開発」といった各キーワードを伴うすべての論文の収集作業を終え、レビューとしてとりまとめるとともに、スケール等の開発に向けた各項目抽出のための基盤づくりを行った。 (2)SSWerエンパワメントスケールの尺度構成検討とSSWerコンピテンスシート項目検討ならびにSSWerと教員との協働評価シート(素案)の作成→SSWer独自のエンパワメント構成概念や尺度構成の検討、SSWer独自のコンピテンシー評価項目の抽出、そして富山県社会福祉士会と富山市教育委員会との協力による教員との協働評価シートの基盤となるカルテの試作を行った。 (3)現任SSWerとの実践研修会の開催と全国アンケート実施に向けた本格的な準備体制の構築→富山県社会福祉士会子ども家庭支援委員会と連携し「スクールソーシャルワーカー実践研修会」を開催し、県教育委員会所属の現任SSWer、中核市である富山市教育委員会所属のSSWer、ならびに県教育委員会のカウンセリング指導員らと富山モデルの全国発信に向けたアンケート実施の準備体制を整えた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究における「研究目的」に対する初年度(平成24年度)の達成度を4つの側面から自己点検した結果、「やや遅れている」という総合評価に至った。 1点目は、政治的要因からの分析と評価である。これについては、「当初の計画以上に進展している」と評価できる。本研究の採択に伴い、すぐに県・市教育委員会と県社会福祉士会とのまさに3者協働によるスムーズな実施体制に努めてきたものと思っている。特に、派遣元の教育委員会、受入れ先の小中学校担当者、現任SSWerによる連絡協議会でインフォームド・コンセントを行い、着実に進めてきている。 2点目は、経済的要因からの分析と評価である。これについては、「遅れている」と言わざるを得ない。文献調査や概念の検討、尺度の構成等、ほとんどが内的な作業を中心としていたため、適切な予算の執行が遅れてしまった。研究協力者との打ち合わせについても、まずはメール等でのやりとりから開始しているため、本格的な予算の執行は2年目からと考えている。 3点目は、社会的要因からの分析と評価である。これについては、「おおむね順調に進展している」と評価できる。富山県は15の全市町村にSSWerを約30名配置していることから、SSWerの量的な評価よりもまさに質的な評価が問われている。したがって、本研究を実施する問題意識と課題解決を図る意義は十分あり、富山から全国へ発信できる評価システムを本格的に構築していきたいと考えている。 4点目は、技術的要因からの分析と評価である。これについては、「やや遅れている」と言わざるを得ない。エンパワメントスケールやコンピテンスシートの開発にまでには至っておらず、初年度は各スケール等の最終段階の検討までとなった。全国に向けたアンケート実施に向け、早急に項目を決定していく。
|
今後の研究の推進方策 |
自己点検による評価にもとづいた結果、本研究の今後の推進方策については2点を挙げた。まず1点目であるが、初年度に積み残したスケール等の開発に向けた最終作業を早急に行うことである。具体的には、①SSWer導入のプロセス評価としている、SSWerが保有すべきエンパワメントの項目の確定と評価スケールの開発、②SSWer導入のアウトカム評価としている、SSWerが身につけるべきコンピテンシー項目の確定とコンピテンスシートの開発、③ケースに対するSSWerと教員の相互評価からなる協働評価シート項目の確定と開発、そして全国調査に向けての予備調査(富山・福岡等)の実施である。また、これらの作業と併せて適切に予算を執行していくことで、速やかに2年目の作業につなげていく。次に2点目であるが、全国規模でのSSWer等への調査の実施と分析を展開させていくことである。予備調査をもとに、①SSWerエンパワメントスケール、②SSWerコンピテンスシート、③SSWerと教員との協働評価シートといった、各スケールやシートの最終的な素案を確定させ次第、全国約600名のSSWerや配置自治体に向け、「SSWerのエンパワメントや評価に関する実態調査」を行っていく。具体的には以下の通りである。 (1)全国実施に向けた体制づくりと各県でのアンケート実施のスケジュール確定 (2)同意の得られた都道府県から、県・市教育委員会等に配布(その際、教育委員会の指示に従いながら、具体的なアンケート実施手続きを進めていく) (3)SSWerエンパワメントスケール、SSWerコンピテンスシート、SSWerと教員との協働評価シートのそれぞれの回収作業とデータの整理および処理 (4)データの分析(因子分析等)をしながら、スケールの標準化、シートの標準化の検討 (5)必要に応じて富山、福岡間でモニタリング実施を繰り返しながら、確定させる
|
次年度の研究費の使用計画 |
前述の自己点検にも記述したとおり、研究費の使用については、執行が「遅れている」と言わざるを得ない。初年度は、文献調査や概念の検討、尺度の構成等、ほとんどが内的な作業を中心としていたため、適切な予算の執行が遅れてしまった。研究協力者との打ち合わせについても、まずはメール等でのやりとりから開始しているため、本格的な予算の執行は2年目からと考えている。 以上のことから、初年度の反省を踏まえ、計画的に適切な予算の執行に努めていきたいと考えている。
|