研究課題/領域番号 |
24530749
|
研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
宇都宮 みのり 愛知県立大学, 教育福祉学部 社会福祉学科, 准教授 (80367573)
|
キーワード | 精神病者監護法 / 農村保健衛生実地調査 / 保健衛生調査会 / 精神病院法 / 中宮病院 |
研究概要 |
本研究は明治・大正期日本の「精神病者」監護政策を分析対象とし、(1) 精神病者監護法制定の社会政策的意図、(2) 「精神病者」に対する認識、(3) 監護義務者及び本人の生活状況、の3つの視点から、当該時代における「精神病者」に対する受容と排除の社会的構造を明らかにすることを目的とする。本研究期間内に主に以下の5つの調査・分析等を行う。(1) 明治民法親族編にみる扶養義務と監護義務の関連の分析、(2) 内務省実施の農村保健衛生実地調査にみる「精神病者」の状況分析、(3) 明治期の「精神病者」関連新聞報道にみる政策転換が市民の意識に与えた影響の分析、(4) 看護(保護)と社会防衛という「精神病者」を取り巻く両価性の分析、(5) 公文書館等に保管されている投書・陳情書等にみる監護法下における市民の意識、当事者・家族の生活状況の分析、である。 平成25年度は、上記5つの調査等のうち、主に(2)(3)(4)に関する研究を進めた。 (2)については内務省が行った9か村および同省指導のもと各地方庁に行わせた134か村のうち、現存する32か村の調査報告書を入手し、当該調査の実施過程を分析し、大正期における精神病者の生活及び認識を明らかにした。その成果を鋭意執筆中である。 (3)については、中宮病院(現大阪府精神医療センター)の看護部長の協力のもと必要資料の収集を行った。現在資料を整理している。また、その成果は鋭意執筆中である。 (4)については、「保健衛生調査会報告書」を基礎資料としながら、精神病者対策の当該時代的意味を検討し、第61回日本社会福祉学会で報告し、関係者からの示唆を得た。(「保健衛生調査会における精神病者対策の検討過程分析」於:北星学園大学)またその成果を執筆し、学術誌に投稿した(掲載予定)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)大正期に実施された農村保健衛生実地調査に関する先行研究は網羅的に収集し、また現存する調査報告書の多くが収集できた。その分析から、精神病に対する当該時代の内務省の認識が①慢性的な不治の病であり、②遺伝(内因)および酒(外因)にその特性を求めており、③全体の罹患者がきわめて多いという認識であったことを鋭意執筆中であり、紀要に投稿予定である。 (2)第二次世界大戦前の制度政策が精神病院での看護にどのような影響を及ぼしていたかを明らかにするために、証言記録等を収集し、現在鋭意分析中であり、学会誌に投稿予定である。 (3)保健衛生調査会第5部会に「精神病」が設置された経緯、その活動、精神病者対策に関する検討過程を分析し、学会で報告し、成果を執筆し、学会誌に投稿した。学会誌に掲載予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
3年間の研究成果を総合的にまとめる1年とする。 (1)大正期の農村保健衛生実地調査関連の資料を再整理し、成果をまとめ、その成果を発表する。 (2)昭和初期の中宮病院の資料から、精神病院と法との関係、警察との関係、看護士の看護実態、精神病者の入院生活などに関する研究成果をまとめ、発表する。 (3)第二次世界大戦前の精神病者監護に関する政策的課題に関するこれまでの研究成果をまとめる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
精神科病院への調査を実施予定であったが、双方の都合で未実施となったため、旅費分が未使用となった。 精神科病院への調査を実施する。
|