研究課題/領域番号 |
24530750
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大谷大学 |
研究代表者 |
脇中 洋 大谷大学, 文学部, 教授 (10319478)
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研究分担者 |
安田 三江子 花園大学, 社会福祉学部, 准教授 (90288613)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 触法知的障害者 / 地域生活定着 / 更生プログラム / ピアサポート / 自己肯定感 |
研究概要 |
本研究では知的障害が疑われる受刑者(触法知的障害者)が矯正施設出所後に地域生活定着が促進されることを目的とした更生プログラムの一環として、ピアサポートプログラムを開発・錬成して評価するものである。 今年度は矯正施設出所後の社会内処遇の実態を把握するために、(1)カナダ・ヴィクトリアで複数のハーフウェイ・ハウスを数回調査し、仮出所者の経歴について複数回インタビューを行ったり、法務官から聞き取りを行ったりした。また(2)国内では播磨社会復帰促進センター・特化ユニット(知的障害者専門の工場)で行われたクラウニング講座を複数回参観して受刑者の変容を観察し、(3)教育統括担当の刑務官と共同研究に向けた協議を行うとともに、(4)地域生活定着支援センターや社会福祉施設の調査を行った。 クラウニング講座とは人前で道化師としての振る舞いを発表するもので、週に1回講座を担当する民間のファシリテーターが10名程度の知的障害受刑者を励まし評価しながら施設内の発表会に向けて4か月にわたって表現力を高めていくもので、これまでの懲罰的意味合いの高い受刑作業や生活改善指導の中では異色の更生プログラムである。だが触法知的障害者にとって他者からポジティブな評価を受けながら自己表現をする経験は乏しく、このようなプログラムは社会復帰に向けたピアサポート活動の一環としてその意義を評価していく意義があると思われた。おそらく触法知的障害者の自己肯定感や自己効力感を高めて、自らの加害経験を見つめて反省悔悟をするとともに、仲間とともに前向きに生きなおす意欲を醸成する効果が予想される。 そこで矯正施設における懲役作業を含む生活改善指導の意義を前提として、教育統括担当の刑務官とクラウニング講座の評価を行う共同研究を行う方向で調整することとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画は矯正施設退所後のピアサポートプログラム開発と評価も射程に入れるものであり、その点では出所後の地域定着支援現場における調査や実践的試みに関する研究は予備調査的なものにとどまり、実践活動においては具体的進展が見られなかった。 だが矯正施設内におけるピアサポートの利点を活かした実現可能な更生プログラムに出会うとともに法務省との共同研究への足掛かりを得ることができて、本研究の目的にかなった具体的実践的な研究につなげる土台作りを達成したということができる。
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今後の研究の推進方策 |
翌年度は社会復帰促進センター内におけるクラウニング講座開始と同時に知的障害受刑者の変化を縦断的に調査して、自己肯定感、自己効力感、生活改善との関連性をきめ細かく評価対象としていく予定である。 またヴィクトリアのハーフウェイ・ハウス(仮出所者のホーム)を引き続き訪れて聞き取り調査を継続し、日本の矯正施設出所後に持続可能な更生プログラムの開発を行う。 なお触法知的障害者の更生状況の評価だけでなく、矯正施設職員や出所後の社会福祉施設職員も対象とした組織論的な連携状況も評価対象に含めるものとし、個人の発達臨床的、能力論的変容だけではなく、領域横断的な調査および評価を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は具体的かつ実践的な更生プログラムにたどり着く過程に手間取り、また矯正施設内で共同研究の見通しを得るまでに、当初の研究計画以上に時間を要したため、計画していた予算を翌年度以降に持ち越すこととなった。 翌年度は計画通り矯正施設内の更生プログラムの評価作業を進めるとともに、矯正施設出所後の地域生活定着支援に資する具体的な更生プログラムの実現に向けたプログラム開発を進展させる予定で、対象となる地域生活定着支援センターを拠点とした調査と連携を図る。
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