本研究は、知的障害が疑われる受刑者に対して、矯正施設における更生や矯正施設退所後に地域生活定着が促進されることを目指した支援活動として、ピアサポーティブなプログラムを実践し、プログラム内容を練成しながらその評価を行うものである。 研究内容として、(ア)矯正施設内でのクラウニング講座の効果検証、(イ)更生保護施設等におけるクラウニング講座の試行的実践とプログラムの錬成、(ウ)カナダのハーフウェイ・ハウスにおける更生保護事業との比較検討の3点を行った。 (ア)播磨社会復帰促進センターでのクラウニング講座の効果検証では、当センター、社会福祉法人かがやき神戸、大谷大学との間で共同研究協定書を締結し、2013年度に予備研究、2014年度以降は本研究として、当講座の受刑者や担当刑務官に対する質問紙を実施するとともに、講座中の受講生の様子を記録してデータを蓄積している。 (イ)京都更生保護会や出所者を受け入れている障害者施設等におけるクラウニング講座の試行的実践とプログラムの錬成は、当更生保護会や京都地域生活定着支援センター、児童自立支援施設阿武山学園職員への聞き取り調査を行ったものの、ピアサポートシステムの構築につながる実践活動にまでは至っていない。 (ウ)カナダ・ヴィクトリアのハーフウェイハウス(Bill Mudge House 他)における更生保護事業との比較検討では、当地を複数回訪問して包括的支援の実態を調査したり、個別縦断的事例データを得たほか、ハワイホノルル市や北欧の実態の一端を調査した。 これらの調査対象先で出会って了解を取ることができた矯正施設や障害者施設の職員による評価も記録し、今後につながるデータの蓄積を果たすことができた。
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