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2016 年度 実施状況報告書

戦前日本の地域福祉の特質に関する基礎的研究―道府県統計書にみる救済構造―

研究課題

研究課題/領域番号 24530755
研究機関佛教大学

研究代表者

池本 美和子  佛教大学, 社会福祉学部, 教授 (90308932)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2018-03-31
キーワード道府県社会事業 / 大正期社会事業 / 道府県特別会計 / 道府県有財産 / 経済保護事業 / 防貧 / 地方債
研究実績の概要

大正期は従来の救貧事業から防貧(地域共同の指導に特化)事業へ範囲が拡大し更に防貧の具体的施策(指導に留まらないもの)へと多様化していく時期にあたる。中でも明らかになったのは通常経費の費目の多様さばかりでなく特別会計・道府県有財産および道府県債に現れた社会事業関連項目の多様さと金額の大きさである。通常経費が府県レベルでは22年以降500万円を超え、市では200万円(~500万)、町村で100万円を超えるようになるのに対し、それと同規模かそれ以上の額が特別会計や道府県市町村債が担うようになっていく。特別会計扱いとなる府県有財産は救済関連の恩賜基金(10種類以上)罹災救助基金をはじめとして住宅関連資金、貧困家庭への教育資金、奨学資金、衛生資金など費目名称で40項目を超え、大正初期に1~3千万円であったのが大正末期には8千万円から1億円に達している。債券発行は住宅、市場、社会事業等、約10種類に大別でき大正末期で9千万円を超えている。府県有財産等は基金として確保されその収益の一部が利用されたのではあるが、戦前期社会事業の範囲を再評価する意味で、この内実の明確化の意義は大きい。通常歳出を抑制しながら特別会計や債券発行を通じてその拡大を進めていった点に戦前期社会事業の限界があり、それは戦後の社会福祉にも影響を及ぼしているとみなしうる。
社会事業関連統計では、国費救済は人数は半分に減っているが金額は大正初期と末期に大きな差が無く5-7万円を推移している。これに対して、公費負担は人数の増加率以上に金額の上昇が顕著で1921年以降は毎年40万円を超えている。国、地方ともに米価高騰の影響があるとはいえ、府県では国の恤救規則より緩和された地方基準が適用されていると思われる。民間の社会事業諸団体の年醵金は毎年200万円近くあり、恒常的な救済事業展開を支えていたといえる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

道府県社会福祉関連の統計データ量が当初想定した以上に膨大であり、計画が遅れがちであったことに加え、2013年末から2014年9月まで体調不良による休職期間があり、復職後も直ちに研究を再開していける体調の安定を確保することが難しかった。これらの事情が重なり研究が遅れ、最終年の完成に至らず、今回延長申請を行い受理された。

今後の研究の推進方策

最終年度(平成29年度)では、大正期の社会事業データの分析をさらに精密に完成させていく。その際、明治期あるいは昭和初期のデータ入力と分析を並行させ社会事業の変化の過程を浮き彫りにしていく。入力済データについては基礎資料として冊子を作成する。

次年度使用額が生じた理由

本年度は大正期のデータ入力完了と分析を終え、同時に昭和初期のマイクロフィルムの複写を継続して行ってきた。本年度が研究最終年度であったが、体調不良による休職および復帰後も不安定で研究の遅れを取り戻すまでに至らず、延長申請によって次年度を完成年度とせざるを得なかったことによるものである。

次年度使用額の使用計画

最終年度としてできる限りのデータ複写と入力・分析を行う。具体的には明治期府県統計書のマイクロフィルム複写25万円、昭和初期の府県統計書のマイクロフィルム複写10万円および昭和初期のデータ整理・処理としてアルバイトによる実施(10万円)を行う。学会報告は大正期のデータ分析を中心に行い(5万円)、あわせて基礎データ資料・配布(25万)などを行う予定である。

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公開日: 2018-01-16  

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