研究課題/領域番号 |
24530756
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
緒方 由紀 佛教大学, 社会福祉学部, 准教授 (50319480)
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研究分担者 |
岡村 正幸 佛教大学, 社会福祉学部, 教授 (00268054)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 精神保健医療福祉 / 脱施設・脱病院・脱制度化 / セクター / システム移行 / 再定住 / ケアの質 / コミュニティ |
研究概要 |
本研究の目的は、精神保健医療福祉領域において、脱施設化・脱病院化・脱制度化のパッケージが定着可能なのかを明らかにし、さらに今後統合ケアシステムに関して求められるケアの質とそのための政策提言を行うことにある。 初年度の24年度は、政策・実践領域における歴史的動向とその結果をもたらす今日的課題について、背景となるいくつかの要因を社会システムの展開フレームとして「コミュニティでの精神科医療の拡大」と「コミュニティでの医療以外のサービスの拡大」に着目し検証を行った。年度末には「精神保健福祉の新しい風 人・事業・コミュニティ-さまざまな試みを通して」と題して研究交流会を企画し、研究代表者・分担者・協力者の3者がそれぞれ研究報告を行い、参加者と討論の場を設けた。24年度の研究概要は次のとおりである。 ≪ポスト脱施設・制度化社会の行方とシステム移行≫日本では、精神病者をごく普通の市民として認め、病気やそのために引き起こされる重層的な生活上の困難の予防や、必要な改善と回復のための社会的努力を怠り、一方で精神科病院を中心とする医療保護政策に偏重し、多大な負担を家族とともに強いてきた。脱施設・脱制度化を進めるべくシステムの移転として、イタリアでの精神科病院改革や、北欧でのノーマライゼーション等障害者施策の経験に学ぶことができるのは、共通して概念の具現化の支持と当事者を社会から分離させない点にある。新たな社会への移行には、実践の成熟が不可欠であること、加えて形成には国や地域における歴史と文化を吸収することにより、多様な道筋をたどることを確認した。 ≪福祉国家の近代化と再定住の方法≫これらを踏まえ、社会システムにおける人間化の視点は、その基底に脱工業社会の進展と、危機の中での国家と社会と市民の関係の再構築という「福祉国家の近代化」の議論へと発展させていくことが必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者および研究分担者の学内業務の時間的制約により、2年目に予定をしている海外調査の予備調査に関しては、文献研究を中心に行うこととなった。なお、日本でのイタリア語の翻訳、通訳等の研究ネットワークの構築を進めており、2年目は現地資料についても事前に収集可能な体制ができつつある。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き新しいコミュニティの位置づけや運営に関する取り組みの進展について、価値や文化、財政移動の点からも実証的にとらえていくこととする。同時に、医療サービスの二極化の実態やコミュニティのサービスの実態把握にもつとめる。 具体的には医療機関、自治体、非営利団体等へのヒアリングと見学、資料調査として海外のフィールドを予定。候補として、イギリスNSF-MH関連国内地域保健チーム、フランスセクター制度について精神保健センターソーシャルワーカー(assistant social)、イタリアフリーウリ=ヴェネツィア・ジュリアー州(特別自治区)担当者等へのヒアリングを計画中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度当初は、文献研究ならびに次年度の海外フィールドの予備調査のための旅費、専門知識の提供等の予算を計上していた。しかし年間を通して、研究代表者と研究分担者の2名ともが予想を上回る学内業務への対応に時間を要することとなり、結果的にこれら費目の未使用金が発生することとなった。これらを含め、次年度は海外でのフィールド調査実施のための旅費を中心に次のとおり予算計上している。 旅費(フィールド調査3名分、学会、研究会)1,600,000円 人件費・謝金(専門知識の提供、資料整理アルバイト代等)300,000円 物品費(ノート型パソコン、書籍)300,000円 その他(資料複写代、報告書等印刷代、郵送代、研究会会場費等)400,000円
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