研究課題/領域番号 |
24530760
|
研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
所 めぐみ 佛教大学, 社会福祉学部, 准教授 (00411281)
|
キーワード | アクティヴシチズンシップ / コミュニティワーク / 福祉教育 / 主体形成支援 / 市民性教育 / 地域福祉 / 国際情報交換 / イギリス |
研究概要 |
本研究課題は英国コミュニティ政策における重要な概念である「アクティヴシチズンシップ」を培うことを目的とした地域実践の理論的実践的課題をフィールド調査を通じて明らかにし、日本における地域を基盤とした福祉教育や市民性教育、それらの学習と実践の専門的支援について、示唆を得ようとするものである。今年度は3度の渡英によるフィールド調査を実施した。エクセターでは地域でのアクティヴシチズンシップ学習実践のプロセスについて、参加と協働を視点として分析するケース研究と実践から培われた経験知の蓄積と普及のための学習プログラムづくりの類型化と分析のためのヒアリング調査と資料収集を実施した。そしてロンドン、ダーラム、バースではアクティヴシチズンシップ学習の地域実践に必要な専門的支援の価値・技術・知識、養成・研修の在り方等について分析するためのヒアリング調査と資料収集を実施した。コミュニティディベロップメント学習という領域とそれに関わるユース&コミュニティワークという資格が英国にはあるが、日本との比較のために、これらに加えてソーシャルワークにおけるコミュニティアプローチついてのヒアリング調査についても今年度は実施することができた。また比較ケース研究の対象としてスコットランドのグラスゴーでのフィールド調査に着手した。政権の交代や国・地方の財政難の中で、実践機関・職員らが地域のニードに対してどのように専門性を発揮して他団体等と協働しながら進めているのか、困難な状況だからこそ重視している価値や実践、工夫や戦略についてヒアリング調査から明らかにすることができた。国、政策の違い、またそれらを超えて共通する価値、専門的支援に必要な知識・態度・技術について、養成プログラムの分析とともに現場のリアリティからの理解とあわせて考察する材料をもつことができたことに今年度の調査の大きな意義があると考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度のヒアリング調査を通じて、政権交代による政策変化、国の財政困難等による助成金等の削減や廃止による影響が、アクティヴシチズンシップ学習を展開してきたコミュニティ支援組織や、コミュニティにおける関係者協働のしくみと運営に、大きな影響(支援組織の解散を含む)を与えていることが明らかになったため、今年度(平成25年度)は地域におけるアクティヴシチズンシップ学習実施関係者自身による事業評価と、外的状況が変化している中での戦略や対応についてのヒアリング調査を先行させた。勤務校より与えられた1年間の学外研修の機会を活用し、3度にわたる英国調査を実施することができた。エクセターでのフィールドワークは主に(1)ケース研究、(2)学習プログラムについての調査を実施した。その成果の一部はすでに学会で報告した。ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ、ダーラム大学、バース大学では(3)専門的支援についての資料蒐集・ヒアリング調査を実施した。また、スコットランドのグラスゴーにて、関連政策と養成プログラム等についてのヒアリングを政府機関、民間機関、グラスゴー大学にて実施し、比較の視点からの検討のためのデータを得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
4年間の研究の2年目である本年度にケース研究にかかるデータを可能な限り集めることができた。またスコットランドにおいてケース研究(地域研究)を着手し、当該研究に直接関係する主要な民間組織、行政組織、大学の担当者のヒアリング調査を通じて、今後研究を深める上で必用な調査についての協力をとりつけることができたため、プログラムの実施状況、内容、成果等より詳細な調査については平成26年度に補足調査として実施する予定である。またプログラムデザインと専門的支援については、これまで蒐集した資料とヒアリング調査の分析から考察を深め、英国での補足調査と電子メール等を通じての英国の関係者との確認作業等を経て、成果報告(学会口頭発表、論文)につなげていく予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
年度末間際に実施したフィールド調査にかかった立て替え分の旅費については、本学の締日を過ぎての帰国が予定されていたことから次年度に請求することになった。そのため次年度使用額が生じている。 ヒアリング調査のテープ起こしにかかる代金、英文校閲代金、成果報告のための学会参加費・旅費、補足調査のための旅費、研究協力者への謝金、図書・資料を含む物品費について、助成金を使用する計画である。
|