最終年度の平成27年度は、これまでに実施した調査の分析を行うとともに、わが国における地域福祉の主体形成支援と地域を基盤とした福祉教育・ボランティア学習への専門的支援のありかた、支援者の養成並びに継続教育について検討を行うため、ソーシャルワーカーの養成および継続教育におけるコミュニティディベロップメントならびにコミュニティディベロップメント学習についての英国と日本における課題を検証し、その一部について学会発表を行い、また論文(共著書籍)を執筆した。 英国では地域のボランタリーな活動や公民協働を支援している民間の地域開発機関に所属するコミュニティディベロップメントワーカーらが、「当事者」・住民がコミュニティ参加やコミュニティにおける役割を果たすことにつながる具体的な活動と、活動参加につなげる学習プログラムの提供等を担っている。ワーカーらは大学等でコミュニティディベロップメントを学び、資格としては若者を支援するユースワークとコミュニティワーク資格を所持していることが多い。ソーシャルワーク教員へのインタビューでは、かつてはソーシャルワーカーがコミュニティディベロップメントを行っていたが、現在のソーシャルワークはより個別支援になっているという。日本では社会福祉協議会などが福祉教育やボランティア学習にとりくみ、住民が自分の地域に能動的に関わり地域課題の解決をしていくという実践の支援もしている。日本の場合は、そうしたワーカーはソーシャルワークを学んでいる。ソーシャルワーク資格である社会福祉士の資格養成カリキュラムに、またこうした仕事を担う現任者の教育のなかに、学校教育における福祉教育だけではなく、コミュニティディベロップメント学習の要素を入れていくことなどを、本研究課題の成果をもとに提案した。
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