最終年度の成果として、中高生を対象とした精神保健福祉教育プログラムを開発し、その効果測定、並びに成果報告を行うことにある。3年間のフィールドワークから、精神保健並びに精神保健福祉に関連する教育として、疾病教育、メンタルヘルス教育、福祉教育の3つの種類に大別できることが明らかになった。 本研究では、当事者・家族・教職員が望む精神保健福祉教育プログラムを開発した。その介入教育は自身の有り様を言語化するワーク、言葉かけのワーク、当事者の語りで構成されている。その結果、介入教育後、学生の自身のメンタルヘルスに関心が高まり、他者への配慮がみられた。また、当事者の語りのDVDを通して、自身の精神障害者への偏見の気づき、当事者の生活のしづらさに対する共感的な理解が高まった。また、このような教育的効果は、語りを行った当事者の精神的報酬や社会的報酬を生み出すことになった。 また、当事者の語りに着目すると、語りの内容は聞き手のライフサイクル上の発達課題やニーズに応じて組み立てることが必要であると示唆された。特に、「当事者の語り」の内容も聞き手のニーズに応えることが重要だった。一方、精神障害者にとって、病いの語りはエンパワメントの社会改革の可能性がみられた。このように、聞き手の子どもに教育的効果がみられ、語り手の当事者のエンパワメントが図られたことは共生社会の創造の可能性を示唆することができる。 上記の成果報告として、教職員、精神保健福祉領域の関係者、当事者・家族を対象として、シンポジウムを開催し、広く普及に努めた。加えて、当事者の語りのエンパワメント効果についても報告書にまとめた。
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