児童養護施設において、児童の暴力は重大な問題であり、時として、児童の集団的暴力によって、児童および職員の安心・安全な暮らしが奪われ、施設の運営さえも危うくさせる事態が生じている。 昨今、児童養護施設関係者からは、「虐待を受けた結果として、行動上の問題を呈する児童の入所が増えたとして、入所直後から施設に適応できず、短期間で児童自立支援施設へ措置変更せざるを得ない」との意見が数多く出されている。つまり、「虐待→児童の問題行動→措置変更」といった文脈である。 本研究では、このような前提のもと、児童養護施設から児童自立支援施設へ措置変更になった児童の調査を行った。その結果、前述のとおり、入所時から行動上の問題があった比較的高年齢の児童が措置変更される傾向も一定程度認められたが、それ以上に、児童養護施設に長期間(幼少時から)入所していた児童が、いわゆる「思春期の壁」を乗り越えることができず、施設不適応を起こす例が数多く認められた。 このような現状を受け、児童の集団的逸脱行動により、施設運営が危機的な状態となった児童養護施設にインタビュー調査を行った。調査結果から、その要因と集団的暴力の因果関係は明らかではないが、児童集団が暴力的構造を強化させる「施設システム」が存在すること、あるいは、特に「性暴力」が混乱の大きな要因となることを見てとることができた。 本研究の成果を生かし、この「施設システム」を体系化し、その体系に即した実践モデルを開発し、児童養護施設において試用、検証することを目的とした研究を2016年度以降に実施する予定である。さらに、これまでの研究は大規模生活集団を想定しているが、実践モデルが小規模生活集団には適さないことが判明しており、新たな研究は両集団の援助システムの相違ににも留意をした上で、実践的な支援モデルの構築を目指したい。
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