平成26年度は、研究代表者と分担者で26年8月に英国で調査を行った。調査では、ノーサンプトン州社会サービス局のパーソナライゼーション施策の責任者へのインタビューを行った。ロンドンなどの大都市部と異なる地方において、どのようにパーソナライゼーション施策を行っているのかについて、自治体における福祉行財政の実態を確認することができた。 たとえば、広域で対応しなければならない地方特有の課題について、職員配置や運営の点について実態を把握することができた。また、ソーシャルケアと保健医療では重なり合う部分が多いため、意思決定が複雑になっているとのことであった。財政面については、同州におけるパーソナライゼーションの財政構造は、これまでの大都市部での調査と比較して大きな相違点はないことがわかった。一方で、ソーシャルケアの市場規模が大都市部と比較すると小さいため、民間のサービス事業者、たとえば社会的企業などが積極的に参入できるほどではないとのことであった。また、パーソナライゼーション施策における対象者の利用傾向、たとえば本人が金銭管理を行うダイレクトペイメント、あるいは自治体のマネジメントするサービスといった区分でそれぞれどのような層が利用を希望するのか、認知症患者の場合はどうなっているのかといった点についても確認できた。そのほか、パーソナライゼーション施策におけるソーシャルワーカーの具体的な活動について、とりわけ金銭管理における重要性について詳細な説明を受けた。 平成26年度調査により、英国ではパーソナライゼーション施策が高齢者福祉分野でも定着している実態を明らかにすることができた。
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